リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「ま。そういうわけだから」

そろそろこの話は終いだと言うように、小林は息を吐いて背筋を伸ばした。
明子もやや居住まいを正して、その言葉に耳を傾けた。

「ヒメからなにかされたら、遠慮なく報告して来い。こっちで対処するから。あの連中のことは、自分でどうにかしようとしなくていいぞ」

締めくくるような小林の言葉に、明子は疑問符が浮かんだ顔で小林を見た。


(なんかって、なんでしょ?)


明子のその表情に、小林はやれやれという顔で明子を見た。

「物騒なことはしないだろうけどな。今日の一件で、お前は完璧にヒメにとっては目障りな女の筆頭になったから。まあ、異動してきたころから、ずっと睨みつけてはいたけどな」

明子は目を剥いて小林を見た。

「異動してきたときからって……、なんでですか? 牧野さんのチームに入ったからですか? それは、私のせいじゃないですよ? 第一、私メ、別に人様の恋路を邪魔する気はありませんもの、そんなのお好きにどうぞって感じなんですけど」
「諦めろ。牧野のやつ。ヒメからお前を庇ったり。ヒメが見てんの知ってて、何度も内緒話とかしたり。コーヒーカップの後片付けもお前にやらせたろ。ありゃ、お前使ってヒメを牽制してるようなもんだろうよ。見ているこっちがハラハラしてたよ」

つらつらと続けられたら客観的事実に、明子は深々と息を吐き出して、頭を抱えた。

「私も。牧野さん勘弁してと、うんざりでした。もう、睨むわ睨むわ。文句があるなら、あなたが大好きな牧野様におっしゃってくださいよ、お嬢様って。心の中で手を合わせて怯えてましたよ」
「なに言ってやがる。舌出して、あっかんべーって笑ってたろうが」
「バレました? いや、めげない子だなあって、感心してました」

肩を竦めて、うふふと笑う明子に、小林もけたけたと笑った。
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