リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「仕事の話以外は、ほとんどしなくてな」
「牧野さんが、ですか?」
ウソでしょうと言うように驚く明子に、小林は「信じられんだろ?」と肩を竦めた。
「俺なんかは、新人のころからイヤってほど知ってるやつだからさ、まあ、課長になっても気安く話しかけることはできたけどな。松山さんなんか、最近まで、牧野とは仕事の話しかしたことなかったんじゃないのかな」
去年までの牧野を思い出しながら、訥々と続く小林の言葉に、明子はきょとんとした顔で、ただ首を傾げるしかなかった。
(牧野さんが?)
(仕事の話しか、しなかった?)
(そんな感じだったっけ?)
明子は、ときおり廊下などで見かけていた去年までの牧野の姿を、必死に思い返した。
「木村たちだって、今みたいに気安く、牧野に話しかけたりなんて、できなかったんだぞ」
「あー、言われてみれば、そうだったかも」
ようやく、二課に配属されたときに感じた息苦しい感覚を思い出した明子は、小林の言葉に合点がいったというように、こくこくと頷いた。
チームワークは良いのに、仕事以外の会話がほとんどないチーム。
二課に異動してきてすぐに、そんな印象を明子は受けた。
直属の上司が気心の知れた小林だったから、なんとかその息苦しさにも耐えられたが、それでもその雰囲気に飲まれたくなくて、あえて、皆の前で牧野とガンガンとやり合いながら仕事をしていたように思う。
「なんか。生真面目さんたちが多いチームねえって、思いました。来たばっかりのころは」
「だろ。牧野がいると、なんかみんな萎縮しちまって、大人しくなっちまってたんだよな」
「萎縮、ですか。牧野さんに」
なんだかなあと言うように、明子は頭を捻るしかなかった。
「牧野さんが、ですか?」
ウソでしょうと言うように驚く明子に、小林は「信じられんだろ?」と肩を竦めた。
「俺なんかは、新人のころからイヤってほど知ってるやつだからさ、まあ、課長になっても気安く話しかけることはできたけどな。松山さんなんか、最近まで、牧野とは仕事の話しかしたことなかったんじゃないのかな」
去年までの牧野を思い出しながら、訥々と続く小林の言葉に、明子はきょとんとした顔で、ただ首を傾げるしかなかった。
(牧野さんが?)
(仕事の話しか、しなかった?)
(そんな感じだったっけ?)
明子は、ときおり廊下などで見かけていた去年までの牧野の姿を、必死に思い返した。
「木村たちだって、今みたいに気安く、牧野に話しかけたりなんて、できなかったんだぞ」
「あー、言われてみれば、そうだったかも」
ようやく、二課に配属されたときに感じた息苦しい感覚を思い出した明子は、小林の言葉に合点がいったというように、こくこくと頷いた。
チームワークは良いのに、仕事以外の会話がほとんどないチーム。
二課に異動してきてすぐに、そんな印象を明子は受けた。
直属の上司が気心の知れた小林だったから、なんとかその息苦しさにも耐えられたが、それでもその雰囲気に飲まれたくなくて、あえて、皆の前で牧野とガンガンとやり合いながら仕事をしていたように思う。
「なんか。生真面目さんたちが多いチームねえって、思いました。来たばっかりのころは」
「だろ。牧野がいると、なんかみんな萎縮しちまって、大人しくなっちまってたんだよな」
「萎縮、ですか。牧野さんに」
なんだかなあと言うように、明子は頭を捻るしかなかった。