リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
新人のころから、牧野の社交性は抜群だったことを知っているだけに、明子には小林の言葉がなかなか理解できなかった。
仕事に対する集中力は、確かに半端なかったが、息抜きの間の取り方もうまく、牧野の周りでは楽しげな笑い声があがることも多かった。
(にこりともせず、仕事をしていた?)
(あの牧野さんが?)
そんな明子の戸惑いが伝わったのか、小林も「そうだなあ」と言いながら、どう説明しようかと言葉を捜すように話し始めた。
「課長になったころから、隙を見せなくなってな。いつでも、キリっとしてて。まあ、あの年で課長だからな。本人も一杯一杯だったんだろうな」
腕を組み、課長になったばかりのころの牧野を思い返しながら、小林は淡々と牧野のことを喋り続けた。
「俺や松山さんみたいな、年上の部下を使わなきゃならないし、でも、部課長が集まれば、一番年下のヒヨッ子扱いだろ。気も使うだろうし、神経も、相当すり減らしていたんだろうな。離婚のゴタゴタのあとってこともあったしな。だから、なんかな、いつもこう、背筋をピンと伸ばしてキリっとしていて、周りが気安く声かける隙も見せてくれなかったんだ」
牧野の心労も判るんだというように、小林はそう言って、そんな話しを始めるきっかけになった話に戻した。
「ヒメは、牧野のそういう姿しか見てないから、クールで素敵な牧野様って印象しかないんだよ、やつに。俺や君島から見りゃ、去年までの牧野なんざ、どうした、お前って感じだったんだけどな」
「そうですねえ。口は悪いけど、話題が豊富な人気者っていうのが、牧野さんのキャラですもんねえ」
明子の言葉に、小林はわははと楽しそうに笑った。
仕事に対する集中力は、確かに半端なかったが、息抜きの間の取り方もうまく、牧野の周りでは楽しげな笑い声があがることも多かった。
(にこりともせず、仕事をしていた?)
(あの牧野さんが?)
そんな明子の戸惑いが伝わったのか、小林も「そうだなあ」と言いながら、どう説明しようかと言葉を捜すように話し始めた。
「課長になったころから、隙を見せなくなってな。いつでも、キリっとしてて。まあ、あの年で課長だからな。本人も一杯一杯だったんだろうな」
腕を組み、課長になったばかりのころの牧野を思い返しながら、小林は淡々と牧野のことを喋り続けた。
「俺や松山さんみたいな、年上の部下を使わなきゃならないし、でも、部課長が集まれば、一番年下のヒヨッ子扱いだろ。気も使うだろうし、神経も、相当すり減らしていたんだろうな。離婚のゴタゴタのあとってこともあったしな。だから、なんかな、いつもこう、背筋をピンと伸ばしてキリっとしていて、周りが気安く声かける隙も見せてくれなかったんだ」
牧野の心労も判るんだというように、小林はそう言って、そんな話しを始めるきっかけになった話に戻した。
「ヒメは、牧野のそういう姿しか見てないから、クールで素敵な牧野様って印象しかないんだよ、やつに。俺や君島から見りゃ、去年までの牧野なんざ、どうした、お前って感じだったんだけどな」
「そうですねえ。口は悪いけど、話題が豊富な人気者っていうのが、牧野さんのキャラですもんねえ」
明子の言葉に、小林はわははと楽しそうに笑った。