リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「お疲れさまです」
美咲のピンク色に染まった声で、牧野が戻ってきたことを察した明子は、振り返りもせずにそのまま前を見ていた。
牧野をというより、目にハートマークを浮かべているであろう美咲を見ることに、うんざりとしていた。
まだ半分以上、弁当箱に詰めてきた惣菜が残っていたが、弁当箱を片付けようかと思案していた。
食欲が、見事なまでになくなっていた。
「ここで、なにをしているんですか? 今日は、出勤の予定はないはずでしょう」
振り返らなくても判る、不機嫌極まりないといった顔が想像できる声に、ほら、怒られたと、明子はため息をこぼして額に手を当てた。
(好かれたいなら、嫌われることをしなきゃいいのに)
(どうして、それが判らないのかなあ?)
なんとかは盲目と小林は言ったけれど、そんな次元の話ではないような気がすると、ぼんやりと弁当箱を眺めながら、そのまま背後で交わされている会話を、明子は聞き入った。
美咲のピンク色に染まった声で、牧野が戻ってきたことを察した明子は、振り返りもせずにそのまま前を見ていた。
牧野をというより、目にハートマークを浮かべているであろう美咲を見ることに、うんざりとしていた。
まだ半分以上、弁当箱に詰めてきた惣菜が残っていたが、弁当箱を片付けようかと思案していた。
食欲が、見事なまでになくなっていた。
「ここで、なにをしているんですか? 今日は、出勤の予定はないはずでしょう」
振り返らなくても判る、不機嫌極まりないといった顔が想像できる声に、ほら、怒られたと、明子はため息をこぼして額に手を当てた。
(好かれたいなら、嫌われることをしなきゃいいのに)
(どうして、それが判らないのかなあ?)
なんとかは盲目と小林は言ったけれど、そんな次元の話ではないような気がすると、ぼんやりと弁当箱を眺めながら、そのまま背後で交わされている会話を、明子は聞き入った。