リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「仕様、どこまでできた?」
牧野がいつもの声で、明子にそう尋ねてきた。
尋ねておきながら、明子が答えるより先にマウスをとり、仕様書を確認する。
「まだ、半分くらいです」
「もう半分できたんだ。早いな」
明子の仕事を褒める牧野のその言葉に、頬のこわばりが解け始める。
仕事を褒められたときだけは、牧野の中に、自分の場所があるように思える。
それが、嬉しい。
自分のその単純さに笑ってしまうそうなくらい、嬉しい。
「やっぱ、こういうの向いてるよな、お前。川田の仕様書は、案外ざっくりしてるからな」
「そうですか? 私のは細かすぎるような気がしますよ」
システム部を離れていた時期が長すぎた。
この春に異動してきたとき、心の底から明子はそう思った。
設計も開発も、明子が以前システム部に在籍していた時代より、かなり標準化が進んでいる。
再び戻っては来たものの、あまりにも判らないことだらけで、最初のうちは一人ではまともに仕様書を書き仕上げることすらできなかった。
これだけ長い間、システム部の仕事から離れていた自分の仕様書が、木村や渡辺たちにどう思われているのか。
今でも、それを考えると不安になった。
「こういう仕事は、最終的には新人に任せることが多いから、これくらい細かく書いてないと、結局、口頭での説明が多くなっちまうんだよ」
ここまで書いてくれば助かると言った牧野は、さらに視線を下げて、明子の弁当を覗き込んだ。
「なんです? その不穏な目は」
眉間に皺を寄せ明子が牽制するよりも早く、牧野は明子が手にしているフォークを素早く奪い取ると、突然のことに呆然としている明子の前で、卯の花を巻いてある玉子焼きを、自分の口の中に放り込んだ。
牧野がいつもの声で、明子にそう尋ねてきた。
尋ねておきながら、明子が答えるより先にマウスをとり、仕様書を確認する。
「まだ、半分くらいです」
「もう半分できたんだ。早いな」
明子の仕事を褒める牧野のその言葉に、頬のこわばりが解け始める。
仕事を褒められたときだけは、牧野の中に、自分の場所があるように思える。
それが、嬉しい。
自分のその単純さに笑ってしまうそうなくらい、嬉しい。
「やっぱ、こういうの向いてるよな、お前。川田の仕様書は、案外ざっくりしてるからな」
「そうですか? 私のは細かすぎるような気がしますよ」
システム部を離れていた時期が長すぎた。
この春に異動してきたとき、心の底から明子はそう思った。
設計も開発も、明子が以前システム部に在籍していた時代より、かなり標準化が進んでいる。
再び戻っては来たものの、あまりにも判らないことだらけで、最初のうちは一人ではまともに仕様書を書き仕上げることすらできなかった。
これだけ長い間、システム部の仕事から離れていた自分の仕様書が、木村や渡辺たちにどう思われているのか。
今でも、それを考えると不安になった。
「こういう仕事は、最終的には新人に任せることが多いから、これくらい細かく書いてないと、結局、口頭での説明が多くなっちまうんだよ」
ここまで書いてくれば助かると言った牧野は、さらに視線を下げて、明子の弁当を覗き込んだ。
「なんです? その不穏な目は」
眉間に皺を寄せ明子が牽制するよりも早く、牧野は明子が手にしているフォークを素早く奪い取ると、突然のことに呆然としている明子の前で、卯の花を巻いてある玉子焼きを、自分の口の中に放り込んだ。