リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
ときどき。
本当に、ときどき。
大きな仕事が終って、一段落ついて、ちょっとだけ頑張った自分へのご褒美に、美味しい珈琲が飲みたくなったとき、ふらりと足を運ぶカフェがある。
一駅分、電車に乗って、歩くこと十分。閑静な住宅地の中にあるカフェだ。
スカートは、そのカフェに隣接しているアンティークショップで買った物だった。


(確か……)
(年が明けてすぐのころ、だったよね?)
(松本の仕事が、終わった後)


普段はひやかすていどで、その店で買い物など滅多なことではしないのに、その日は、あるスカートに、目が吸い寄せられてしまった。

一目惚れ。

そのときの心境を例えて言うなら、それが一番ピッタリだろう。
そんな出会いをしてしまったスカートだった。

アイボリーの優しい風合いのウール素材のスカート。
裾はクロッシュレースやリボンによって、派手になりすぎない絶妙さで、品良く縁取られている。


(コットンの、ワンピースとかと、重ねても)
(きっと、ぜったい、かわいいな)


そんなことを思いながら手に取り眺めていると、店員が話しかけてきた。
店員の話によれば『1900年ごろのアンティークもの』らしい。


『年代物なので、少し生地にシミがあったりしますけど、状態はいいものですよ』


にっこりと微笑みながら、柔道選手に力任せに抱きしめられたら、簡単にボキボキと折れてしまいそうな華奢な体型の店員は、そう言葉を続けた。
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