リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「ずっといたのか、あのお嬢様」
「課長がお昼に出て、十五分くらいしてからですかね。あの団体ご一行様が、わいわいとやってきましたよ」
「花見でもあるまいし。こんなデカい重箱に飯を詰めてくるか? なんかズレてんだよな、あのお嬢様」

明子と同じプリンを食べながら、牧野がぼそりと、疲れた声でそうぼやいた。
明子も、牧野と同じくらい疲れた声で、それに答える。

「どうするんですか、それ?」

牧野の杖の上にどんと置かれた重箱を、明子は横目で捕らえながら牧野にそう尋ねると、牧野が途方に暮れた顔で「どうしたらいい?」と、その対処を相談してきた。

「月曜まで、このままで平気だと思うか?」
「生ものなんか入っていたら、匂いますよ。明日も、昼間は今日と同じくらい、暖かいみたいですよの」
「誰か、食ってくれねえかなあ」
「自分で、食べたらどうですか。せっかくのお弁当なんですから」
「冗談じゃねえ。そんなことしたら、つけあがるだけだ」
「つけあがるって、そんな言い方しなくても」
「甘い顔すると、すぐ調子に乗るんだよ。私たちラブラブ~って」
「は?」

ら、らぶらぶ?
よもや、牧野の口からそんな言葉を聞かされる日が来るとは、まったくもって想定していなかった明子は、胡乱な目つきで牧野を見た。
言った牧野自身も、げんなりとした様子で顔をしかめている。
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