リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
閃きが、すとんと明子の中に、落ちてきた。
天からの声のように、落ちてきた。


(舞台を、見に行くときに着て行こう)
(そうだよ)
(こんな決意をした日に、こうして見つかったんだもん)
(あんがい、ラッキーアイテム? なのかも?)


自分のずぼらさなどうっちゃり捨てて、明子は自分のその閃きに、気をよくした。


(ちょっとはね)
(オシャレして、行かないとね)
(もしも……)
(もしも、舞台に近い席だったらさ)
(一度くらいは、目があったりするかもしれないじゃない)
(それくらいのこと、あるかもしれないじゃない)
(うふふ)


そんなふうに、またもやあらぬ方向に暴走し始めた思考回路を、明子は力ずくで巻き戻した。


(掃除だ!)
(掃除!)
(まずは、掃除!)
(妄想はあと!)
(そのあと!)


そう自分を、叱咤した。
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