リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
そして、気がつくと、すっかり日が落ちて、空には雨雲が広がり始めた夜になっていた。
牧野に帰るぞと声を掛けられ、一緒に外を出てきた明子は、どうしようと迷っていた。
牧野は、明子が付いてくるが当然と言うように先を歩いている。
牧野が車を止めている駐車場は、会社から三分、四分歩いた場所にある。
バス停に向かうには、その途中の交差点で別れることになる。
淡い期待を抱いて来た。
けれど、それが現実になりそうになって、心が怯んだ。
淡い期待は、ただの思い込みに過ぎないと、醒めた目で、浮かれている自分を冷ややかに見つめている自分がいた。
この恋は叶わない。
またそれを思い知らされるだけだと、怯える心が、だから逃げなさいと明子を諭す。
迷いながら、別れ道になるその交差点に差し掛かり、明子は意を決したように顔を上げ、牧野に声をかけた。
「お疲れ様でした。私、こっちなんで」
振り返った牧野が、なにを言っているんだという顔で明子を見た。
「送るって言ったろ。乗っていけよ。雨降りそうだし」
「大丈夫ですよ。牧野さん、徹夜明けなんですから、早く休んだほうがいいですよ」
「徹夜明けだから乗っていけって。居眠りしたら叩き起こせよ」
「でも」
「どうしたんだよ? おかしいぞ、お前」
訝しがる牧野に、明子は返す言葉を見つけられずに俯いた。
(小林さんのバカ)
(あんな話、聞かなきゃ、こんなに意識することなんてなかったのに)
気まずさを口にすることができず、明子は途方に暮れて立ちすくんだ。
牧野に帰るぞと声を掛けられ、一緒に外を出てきた明子は、どうしようと迷っていた。
牧野は、明子が付いてくるが当然と言うように先を歩いている。
牧野が車を止めている駐車場は、会社から三分、四分歩いた場所にある。
バス停に向かうには、その途中の交差点で別れることになる。
淡い期待を抱いて来た。
けれど、それが現実になりそうになって、心が怯んだ。
淡い期待は、ただの思い込みに過ぎないと、醒めた目で、浮かれている自分を冷ややかに見つめている自分がいた。
この恋は叶わない。
またそれを思い知らされるだけだと、怯える心が、だから逃げなさいと明子を諭す。
迷いながら、別れ道になるその交差点に差し掛かり、明子は意を決したように顔を上げ、牧野に声をかけた。
「お疲れ様でした。私、こっちなんで」
振り返った牧野が、なにを言っているんだという顔で明子を見た。
「送るって言ったろ。乗っていけよ。雨降りそうだし」
「大丈夫ですよ。牧野さん、徹夜明けなんですから、早く休んだほうがいいですよ」
「徹夜明けだから乗っていけって。居眠りしたら叩き起こせよ」
「でも」
「どうしたんだよ? おかしいぞ、お前」
訝しがる牧野に、明子は返す言葉を見つけられずに俯いた。
(小林さんのバカ)
(あんな話、聞かなきゃ、こんなに意識することなんてなかったのに)
気まずさを口にすることができず、明子は途方に暮れて立ちすくんだ。