リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「今月は、まだどこも登ってないんだよな」
「そんなに毎月、登ってるんですか?」
「ああ。強制的にそういう時間を作らないと、ホントに、仕事しかないヤツになっちまいそうだろ」
それはそうだろうけれどと思いながら、明子は少し牧野が心配になった。
山は登り始めると、次第に心が空っぽになっていく場所だった。
頂上に着く頃には、体はクタクタでも、心はすっきりと軽くなっていた。
少なくとも、明子にとって、山はそういう場所だった。
迷いも、悩みも。
妬みも、僻みも。
ありとあらゆる負の感情が溜まって、くつくつと鬱屈していた心が、嘘のように晴れていった。
直面している問題も悩みも、なに一つとして解決していないし、解決の糸口だって見つかってはいないけれど。
それでも、心は晴れてすっきりしていた。
牧野にも、そんな鬱屈した思いがあるのだろうかと思うと、その横顔を見つめる明子の目が、不安に揺れた。
でも、それも当然なのかもしれない。
小林が話してくれた去年までの牧野の様子を思い描けば、相当のストレスがその心を蝕んでいたに違いない。
時折、見かけていた背の広い背中には、確かに孤独もあった。
皆に囲まれ楽しそうに笑いながらも、何故か一人ぼっちに見えていた、その背中を明子は思い出した。
自分を静かに見つめている、そんな明子の揺れる瞳になど気付いていないように、牧野は楽しそうに喋り続ける。
「そんなに毎月、登ってるんですか?」
「ああ。強制的にそういう時間を作らないと、ホントに、仕事しかないヤツになっちまいそうだろ」
それはそうだろうけれどと思いながら、明子は少し牧野が心配になった。
山は登り始めると、次第に心が空っぽになっていく場所だった。
頂上に着く頃には、体はクタクタでも、心はすっきりと軽くなっていた。
少なくとも、明子にとって、山はそういう場所だった。
迷いも、悩みも。
妬みも、僻みも。
ありとあらゆる負の感情が溜まって、くつくつと鬱屈していた心が、嘘のように晴れていった。
直面している問題も悩みも、なに一つとして解決していないし、解決の糸口だって見つかってはいないけれど。
それでも、心は晴れてすっきりしていた。
牧野にも、そんな鬱屈した思いがあるのだろうかと思うと、その横顔を見つめる明子の目が、不安に揺れた。
でも、それも当然なのかもしれない。
小林が話してくれた去年までの牧野の様子を思い描けば、相当のストレスがその心を蝕んでいたに違いない。
時折、見かけていた背の広い背中には、確かに孤独もあった。
皆に囲まれ楽しそうに笑いながらも、何故か一人ぼっちに見えていた、その背中を明子は思い出した。
自分を静かに見つめている、そんな明子の揺れる瞳になど気付いていないように、牧野は楽しそうに喋り続ける。