リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
駅前にあるその店は、外から見る印象よりも奥行きがあり、思っていた以上に広く感じられるの店だった。
夜、店の前を通るたび、気になってはいた。
明子が店の前を通って帰る時間のころは、たいてい、二人、三人の常連らしき客たちがカウンター前の席に座り、店主と言葉を交わしながら楽しそうに食事をしている姿が窓越しに見えた。
ちらりと見える料理に、美味しそうだなあと思いながらも、なぜか、その店の前に立つと、女一人で入っていくのに気後れしてしまい、けっきょく、入ることのないまま今に至っている店だった。
昔はよく来ていたと牧野は言ったが、少し年配の店主夫婦はしっかりと牧野を覚えていた。
少し癖のアル日本語で「久しぶりですね」「あらま、なつかし」と言いながら、牧野に笑顔を見せた。
「お母さんたちはよく来るのに、あなた、なかなか来ないからね。久しぶり久しぶり」
「いろいろとね、俺も忙しいんですよ。今日はたっぷり食べていきますから。よろしく」
珍しく、他に客はいなかった。
手持ちぶたさだったのか、牧野の来店に気をよくした様子の女店主は嬉しそうに喋り続け、牧野は苦笑を浮かべつつもそれに軽い口調で応じた。
家族ぐるみで来ていた店なのかと、女店主の言葉に明子はそんなことを考えた。
カウンターの席ではなく、店の奥に二つあるテーブル席の一つに、牧野は座った。
明子も牧野に続くように、入り口に近い対面側に腰を下ろした。
「あっかいもんがいいな。なにか食いたいもの、あるか?」
「えーと。初めてくるお店なんで、お任せします」
そうかと言いながら、牧野はメニューを眺めて、お冷やを持ってきた女性店主に、二つ、三つと注文していった。
夜、店の前を通るたび、気になってはいた。
明子が店の前を通って帰る時間のころは、たいてい、二人、三人の常連らしき客たちがカウンター前の席に座り、店主と言葉を交わしながら楽しそうに食事をしている姿が窓越しに見えた。
ちらりと見える料理に、美味しそうだなあと思いながらも、なぜか、その店の前に立つと、女一人で入っていくのに気後れしてしまい、けっきょく、入ることのないまま今に至っている店だった。
昔はよく来ていたと牧野は言ったが、少し年配の店主夫婦はしっかりと牧野を覚えていた。
少し癖のアル日本語で「久しぶりですね」「あらま、なつかし」と言いながら、牧野に笑顔を見せた。
「お母さんたちはよく来るのに、あなた、なかなか来ないからね。久しぶり久しぶり」
「いろいろとね、俺も忙しいんですよ。今日はたっぷり食べていきますから。よろしく」
珍しく、他に客はいなかった。
手持ちぶたさだったのか、牧野の来店に気をよくした様子の女店主は嬉しそうに喋り続け、牧野は苦笑を浮かべつつもそれに軽い口調で応じた。
家族ぐるみで来ていた店なのかと、女店主の言葉に明子はそんなことを考えた。
カウンターの席ではなく、店の奥に二つあるテーブル席の一つに、牧野は座った。
明子も牧野に続くように、入り口に近い対面側に腰を下ろした。
「あっかいもんがいいな。なにか食いたいもの、あるか?」
「えーと。初めてくるお店なんで、お任せします」
そうかと言いながら、牧野はメニューを眺めて、お冷やを持ってきた女性店主に、二つ、三つと注文していった。