リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「昨日、小林さんから、簿記試験の書類、貰ったろ」

やっぱり仕事の話かと、明子は肩を落として、うんざりした顔で牧野を見た。
そんな話なら会社ですればすむことじゃないですかと、勝手に期待していた自分が腹を立てていた。

「その、な」
「はい?」

珍しく、おどおどした様子で言いよどんでいる牧野に、明子はなんだろうと首を傾げる。

「中……、見たか?」
「いいえ。まだちゃんとは見てないです。なんでですか?」
「いや。なんでもない。そっか」

少し安堵して、少し残念がって。
そんな顔をしている牧野に、明子はまた首を傾げる。


(今日の牧野さんは、少し、情緒不安定?)
(なんか、ヘン)


なにかを言いよどむ牧野など、滅多なことではお目にかかれない。
言いたいことをズケズケと。
それが牧野田。
だから、いつもらしからぬ牧野に、どうしたのかしらと、明子は訝しがるしかなかった。

明子の視線に、牧野はごまかすように軽く咳払いして、いつもの顔を作った。
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