リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「まあ。良く見て考えてくれ。勉強会に参加するなら言ってくれ。参加できるように、ある程度、仕事は調整するから」
「はあ」

あまり乗り気ではない様子の明子に、牧野は聞こえよがしのため息を吐く。

「あのな。システム部にいる以上、持っていたほうがいいの、判ってるだろ? なんだかんだいっても、ウチの主力商品は会計システムなんだから」

原価管理のシステムだって簿記が判らなきゃダメだろうと諭され、「それは……、判っているんですけど……」と、明子は口ごもった。

「お前、基礎は出来てるんだから、試験もそんなに難しくないと思うぞ。なんでそんな嫌がるんだよ? なんか、受けたくない理由でもあるのか?」

明子を見据えてそう問いつめる牧野に、明子は知らず唇を噛みしめていた。

理由は、ある。
牧野から見れば、お前はバカかと呆れてしまうことだろう。
けれど、明子なりの理由が、あった。

密かに勉強していたころ、女がそんな出世のことばかり考えてどうするんだと詰られ嘲笑われた。
その苦い記憶がどうしても拭えないのだ。
それに、今回はもう一つ。
どうしても乗り気になれない蟠りもあった。
それを、渋々というように明子は口にした。

「本部長に、言われたんですか?」
< 335 / 1,120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop