リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「本部長? いや。受けるように、言われたのか?」

眉をひそめた牧野を見て、明子はしくじったわと肩をすくめた。


(しまった、墓穴?)
(いや、薮蛇?)


とにかく、はやまったかもと思いながら、今更不自然に否定してところで、信じてもらえるはずはなかったので、不承不承という態で、ええと頷いた。

「二月の試験、受けたらみたらどうだって」
「本部長にそう言われたなら、受けないわけいかないだろ。受けろよ」

明子の言葉に、一瞬、きょとんという表情になった牧野を見て、本当に本部長の指し金ではないということは明子にも判った。
明子の言葉を聞きながら、ふうんと頷いていた牧野は、そこまで言われたなら腹を括れというようにも、明子にそう言い聞かせた。
けれど、明子はまだ頷けなかった。

「まあ、受ける受けないは、もちろん、お前の自由だけどな。受からないことには、上にはあがれないぞ」

明子の表情に、これ以上の無理強いは逆効果と判断したらしい。
その話を締めくくるように、牧野はそう告げた。
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