リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「別に。あがらなくても」
「あがってこいって言っただろ。いつまでも、そんなとこで燻ってるんじゃねえよ」
「そんなとこって」
どんなとこですかと言いかけて、林田の言葉が思い出された。
‐あがってくるのを待っているヤツもいるようだぞ。
あの夜の、怖いほど真剣だった牧野の横顔が脳裏に浮かびあがってきた。
(本当に、待っているの?)
(あたしを?)
(どうして?)
牧野が、自分にそんなことを言う理由が、明子には判らなかった。
役職に対してのこだわりなど、明子には全くない。
牧野と張り合ってはきたけれど、出世競争などしていたつもりもない。
はなから、そんなものは勝負にならない。
自分を必要としてくれているのかもしれないけれど、それだけならば今のままでも十分なはずだ。
そう思うと、ますます牧野の真意が判らなくなった。
「なんで、そんなにこだわるんですか。役職なんて。私は今のままで……」
「俺は、お前の実力も実績も、正しく評価されるべきだと思っているからだ」
「されているかと……」
「ホントにそう思うか?」
明子の言葉をことごとく遮って反論する牧野に、明子はまたため息をこぼす。
「仮に、簿記の資格を取れたところで、必ず昇進できるってわけじゃないし」
「本部長の推薦あれば、それは間違いないだろ」
「推薦なんて」
「簿記の刺激を受けろって言われたってことは、そういうことだろ。本部長、なんだって言ってたんだよ?」
明子は、暗い顔で息を吐いた。
一番嫌な話だった。
「あがってこいって言っただろ。いつまでも、そんなとこで燻ってるんじゃねえよ」
「そんなとこって」
どんなとこですかと言いかけて、林田の言葉が思い出された。
‐あがってくるのを待っているヤツもいるようだぞ。
あの夜の、怖いほど真剣だった牧野の横顔が脳裏に浮かびあがってきた。
(本当に、待っているの?)
(あたしを?)
(どうして?)
牧野が、自分にそんなことを言う理由が、明子には判らなかった。
役職に対してのこだわりなど、明子には全くない。
牧野と張り合ってはきたけれど、出世競争などしていたつもりもない。
はなから、そんなものは勝負にならない。
自分を必要としてくれているのかもしれないけれど、それだけならば今のままでも十分なはずだ。
そう思うと、ますます牧野の真意が判らなくなった。
「なんで、そんなにこだわるんですか。役職なんて。私は今のままで……」
「俺は、お前の実力も実績も、正しく評価されるべきだと思っているからだ」
「されているかと……」
「ホントにそう思うか?」
明子の言葉をことごとく遮って反論する牧野に、明子はまたため息をこぼす。
「仮に、簿記の資格を取れたところで、必ず昇進できるってわけじゃないし」
「本部長の推薦あれば、それは間違いないだろ」
「推薦なんて」
「簿記の刺激を受けろって言われたってことは、そういうことだろ。本部長、なんだって言ってたんだよ?」
明子は、暗い顔で息を吐いた。
一番嫌な話だった。