リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「そういうことに巻き込まれるの、面倒ですし。林田派だの、塚本派だの」
監査役の座を巡り、最近、林田と営業本部長の塚本英二(つかもと えいじ)は火花を散らしているという噂話くらい、社内の動向になどほとんど興味のない明子でも、知っている話だった。
林田の推薦で上にあがるということは、間違いなく、これからの明子には林田派の烙印が押されることになる。
システム部にいる以上、それは全員に当てはまることと思われそうだが、実のところを言えばそうでもなかった。
第三システム部の部長職にある栗田広明(くりた ひろあき)は、システム部全体を統括する事業本部長の座を狙い、林田とは水面下での確執があると噂されているし、他にも数名、林田を追い落とそうとしている者たちがいることくらい、十年以上も会社にいれば、否も応もなく明子の耳にだって入ってくる。
牧野も、基本的には林田派ではないはずだった。
もっとも、社内でそれを知っている者は、今のところ限られている。
明子の知る限りでは、第二システム部内でその事実を知っている者は、君島と小林くらいだ。
もしかしたら、今なら笹原もそれは知っているかもしれないが、それを確認したことはない。
明子はと言うと、かつてシステム部に在籍していたころ、ひょんなことから、それを牧野自身から聞かされていた。
だから、たいていの者は、牧野なことを今のところは林田派と認識していた。
「どっちにしても、もう巻き込まれてるんだよ、お前。林田派じゃないと思われたら、塚本本部長がくるぞ、営業にもいたんだからな」
「そんなこと、ある訳ないじゃないですか。私ごとき、塚本本部長は気に留めもしないですよ」
「今回の一件で、それも変わる。間違いなく、塚本さんもお前の仕事に注目する。それだけのことをしてきたんだよ、お前は。塚本さんとは、あんまり、そりが合わなかったんだろ。だったら林田さんに付いとけよ。システム部にいるなら、そのほうが楽だぞ」
「そんなこと言ったら、牧野さんだって、林田派じゃないですよね。やりづらいこと、ありますか」
「ばか。俺は表向きは林田派の顔してるだろうが。まあ、林田さんは感づいていたけどな。でも、近々、手を組む予定だし、林田さんとは」
問題なんて全くねえや。
口角をにぃっと上に上げて笑いながら、突然落とされた爆弾発言に、明子は思わず、目を見開き固まった。
主語をぼやかしながらのそのきな臭い話に、いやだなあと重い息を吐き出した
そういう話を、造作なく簡単に聞かせてほしくなかった。
監査役の座を巡り、最近、林田と営業本部長の塚本英二(つかもと えいじ)は火花を散らしているという噂話くらい、社内の動向になどほとんど興味のない明子でも、知っている話だった。
林田の推薦で上にあがるということは、間違いなく、これからの明子には林田派の烙印が押されることになる。
システム部にいる以上、それは全員に当てはまることと思われそうだが、実のところを言えばそうでもなかった。
第三システム部の部長職にある栗田広明(くりた ひろあき)は、システム部全体を統括する事業本部長の座を狙い、林田とは水面下での確執があると噂されているし、他にも数名、林田を追い落とそうとしている者たちがいることくらい、十年以上も会社にいれば、否も応もなく明子の耳にだって入ってくる。
牧野も、基本的には林田派ではないはずだった。
もっとも、社内でそれを知っている者は、今のところ限られている。
明子の知る限りでは、第二システム部内でその事実を知っている者は、君島と小林くらいだ。
もしかしたら、今なら笹原もそれは知っているかもしれないが、それを確認したことはない。
明子はと言うと、かつてシステム部に在籍していたころ、ひょんなことから、それを牧野自身から聞かされていた。
だから、たいていの者は、牧野なことを今のところは林田派と認識していた。
「どっちにしても、もう巻き込まれてるんだよ、お前。林田派じゃないと思われたら、塚本本部長がくるぞ、営業にもいたんだからな」
「そんなこと、ある訳ないじゃないですか。私ごとき、塚本本部長は気に留めもしないですよ」
「今回の一件で、それも変わる。間違いなく、塚本さんもお前の仕事に注目する。それだけのことをしてきたんだよ、お前は。塚本さんとは、あんまり、そりが合わなかったんだろ。だったら林田さんに付いとけよ。システム部にいるなら、そのほうが楽だぞ」
「そんなこと言ったら、牧野さんだって、林田派じゃないですよね。やりづらいこと、ありますか」
「ばか。俺は表向きは林田派の顔してるだろうが。まあ、林田さんは感づいていたけどな。でも、近々、手を組む予定だし、林田さんとは」
問題なんて全くねえや。
口角をにぃっと上に上げて笑いながら、突然落とされた爆弾発言に、明子は思わず、目を見開き固まった。
主語をぼやかしながらのそのきな臭い話に、いやだなあと重い息を吐き出した
そういう話を、造作なく簡単に聞かせてほしくなかった。