リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
『あそこ、バーベキューをやる場所とか、テニスコートとかもあるから、そこでやろうってことでね』
「判りました。なにか、準備しておくものがあったら、言ってください」

そんな会話を交わしながら電話を切って、明子は息を吐いた。
これ以上、意固地になって頑なな態度をとれば、きっと、もっと面倒になるだろう。
明子は、そう思った。
話を聞く限りでは、そんな堅苦しいものでもなさそうだし、姪たちも行くというのであれば、あの子たちと遊んでいればいい。


(一度でも顔を出せば、あの人も、少しは満足するだろう)
(自分は立派に、親の務めを果たしていると、安心するに違いない)
(気晴らししてこよう)
(うん)
(あの公園、変形自転車のレンタルもしているし)
(風が強くなかったら、あの子たちを乗せて、公園をぐるりと回ってくるのも、楽しそうだし)
(なにか、甘いものでも作って持っていこうかな)
(食後のデザートに)


そんなことを考えながら、明子はゆっくりと湯飲みに番茶を注ぐ。
残ったお湯は、いつものように藤かご風の卓上魔法瓶に移し替えた。
まだ喉に違和感はあるものの、頭痛はかなり治まった。


‐もう、泣くのは、終わり


そう、ぽつりと呟いた。
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