リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
人伝に、女の子が生まれたと聞かされたことがある。


(三つか、四つくらいよね)
(かわいい盛りだね)


幸せそうな親子三人の姿が、明子の閉じた瞼の裏に浮かんだ。
自分とは違う他の誰かと微笑みあっている、そんな姿が浮かぶ。

彼の目に映る自分と、自分を見る彼の目の色を想像するだけで、顔を上げる気力まで萎えていくようだった。

明子は、額をこつんと、冷蔵庫に押し付けた。


(関ちゃん、助けてよ)
(また、魔法をかけて)
(キラキラで、フワフワの、優しい魔法)
(あたしに、かけて)


手にしていた携帯電話を、明子は眺めた。
伝言メモのアイコンを選んで、伝言の一覧を眺めた。
牧野の名前が、いくつも、いくつも、繰り返し続いている。

一番新しい伝言を選んで、携帯電話を耳に当てた。


『小杉。どこにいる?』

息を切らして喋る、牧野の声がした。

『家にいるのか? まだ、外にいるのか? どこにいる? 迎えに行くから』

牧野の声の向こうから、降りしきる雨の音が聞こえていた。
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