リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
梅干を一つ。
種を抜いて、潰して湯飲みに入れて。
生姜を一掛け摩り下ろして、汁を数滴、梅干しを入れた湯飲みに。
醤油をたらりと一回し。
そこに、熱い番茶を注ぎ淹れる。
風邪気味のときに、明子がよく作る物だった。
自分の湯飲みにも、また番茶を注ぎ淹れて、牧野の元へと戻る。
「温まりますから」
スプーン入りで差し出された湯飲みを、なんだという顔で眺めている牧野に、梅干を入れた番茶ですと、明子は教える。
「へえ。サンキュ」
両手で包み込むように、手渡された湯飲みを持った牧野は「あったけえな」と、まずは手の平を温めていた。
どう頑張っても動きそうにない牧野に、仕方がないと諦めた明子も、その後ろに腰を下ろした。
「風邪、引きますよ。あんなところに、夜通しいたりして」
「んー。まあ、俺は丈夫だから平気だ」
「お客様用の布団くらいありますから、上がって休んでください」
「いいって。俺様はとっても繊細だからな。枕が替わると、眠れねえんだよ」
「なにを言ってるんだか。ダンボールを敷いて、新聞紙を被って寝ていた人が」
「ははは。なあ。若かったよなあ。昔の俺」
「昔は、誰でも若いんです」
「やべぇ。小杉に正論を言わせちまうほど、弱ってるのか、俺」
そんな軽口を叩きながら、梅干を解して番茶を啜っていた牧野は「暖まるな、これ」と、静かに告げた。
種を抜いて、潰して湯飲みに入れて。
生姜を一掛け摩り下ろして、汁を数滴、梅干しを入れた湯飲みに。
醤油をたらりと一回し。
そこに、熱い番茶を注ぎ淹れる。
風邪気味のときに、明子がよく作る物だった。
自分の湯飲みにも、また番茶を注ぎ淹れて、牧野の元へと戻る。
「温まりますから」
スプーン入りで差し出された湯飲みを、なんだという顔で眺めている牧野に、梅干を入れた番茶ですと、明子は教える。
「へえ。サンキュ」
両手で包み込むように、手渡された湯飲みを持った牧野は「あったけえな」と、まずは手の平を温めていた。
どう頑張っても動きそうにない牧野に、仕方がないと諦めた明子も、その後ろに腰を下ろした。
「風邪、引きますよ。あんなところに、夜通しいたりして」
「んー。まあ、俺は丈夫だから平気だ」
「お客様用の布団くらいありますから、上がって休んでください」
「いいって。俺様はとっても繊細だからな。枕が替わると、眠れねえんだよ」
「なにを言ってるんだか。ダンボールを敷いて、新聞紙を被って寝ていた人が」
「ははは。なあ。若かったよなあ。昔の俺」
「昔は、誰でも若いんです」
「やべぇ。小杉に正論を言わせちまうほど、弱ってるのか、俺」
そんな軽口を叩きながら、梅干を解して番茶を啜っていた牧野は「暖まるな、これ」と、静かに告げた。