リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「小杉」
牧野が、背を向けたまま、ぼつりと明子を呼んだ。
「頼むから。ちゃんと聞いてくれ。途中で耳塞いで、俺の言葉、全部拒んで、一人で飛び出して行ったりしないでくれ」
遠くところに行くなんて、言わないでくれ。
これまで一度たりとも聞いたこともない、今にも消え入りそうなか細い牧野の声に、胸が締め付けられた。
伸ばした手を引き戻し、明子は俯くようにして噛み締めた。
(だって……)
(もう、聞きたくなかったんだもん)
(なんにも、聞きたくなかったんだもん)
(もう、傷つきたくなかったんだもん)
(苦しいの、いやなんだもん)
そう、心が言い訳する。
けれど、自分の発したあの言葉で、牧野がこんなに傷ついていることを知り、明子は自分が情けなくなった。
自分だけを一方的に正当化して、牧野だけを一方的に責めて傷つけた。
牧野だけではない。
きっと、母も深く傷つけた。
昨日のあたしは最低だったと、明子は唇をきつく噛みしめた。
牧野が、背を向けたまま、ぼつりと明子を呼んだ。
「頼むから。ちゃんと聞いてくれ。途中で耳塞いで、俺の言葉、全部拒んで、一人で飛び出して行ったりしないでくれ」
遠くところに行くなんて、言わないでくれ。
これまで一度たりとも聞いたこともない、今にも消え入りそうなか細い牧野の声に、胸が締め付けられた。
伸ばした手を引き戻し、明子は俯くようにして噛み締めた。
(だって……)
(もう、聞きたくなかったんだもん)
(なんにも、聞きたくなかったんだもん)
(もう、傷つきたくなかったんだもん)
(苦しいの、いやなんだもん)
そう、心が言い訳する。
けれど、自分の発したあの言葉で、牧野がこんなに傷ついていることを知り、明子は自分が情けなくなった。
自分だけを一方的に正当化して、牧野だけを一方的に責めて傷つけた。
牧野だけではない。
きっと、母も深く傷つけた。
昨日のあたしは最低だったと、明子は唇をきつく噛みしめた。