リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
正直。
明子は、振り返って早々、目のやり場に困っていた。
いつものように、牧野の言葉に軽口で応じながら、胸がドキリと高鳴って、どうしようもなかった。
肩に力が入って、体がこわばる。
ネクタイを外したワイシャツは、第二ボタンまで外れ、細い体つきなのに程よく鍛えられている胸板が、ちらちらと垣間見える。
それが妙になまめかしい。
それなのに、寝起きで髪をボサボサにしているその顔は、会社では見ることのない、無防備な子どものような顔だった。
そこにいたのは、起きたと同時にぱきぱきと働き始め仕事を片づけていく、企業戦士の異名を持った男ではなかった。
-お。上手い。
そんな賞賛の言葉が、後ろから聞こえてきた。
その声に、ようやく明子は肩から力を抜いた。
「なんか、作りますか? お昼」
昼時は過ぎていたが、あれっぽっちのご飯じゃ、牧野のことだからお腹が空いているのかもと、背を向けたまま明子は牧野にそう声を掛けた。
「んー。どうしようかね」
テーブルの上に置いておいた、鍵を弄っている音がした。
明子は、振り返って早々、目のやり場に困っていた。
いつものように、牧野の言葉に軽口で応じながら、胸がドキリと高鳴って、どうしようもなかった。
肩に力が入って、体がこわばる。
ネクタイを外したワイシャツは、第二ボタンまで外れ、細い体つきなのに程よく鍛えられている胸板が、ちらちらと垣間見える。
それが妙になまめかしい。
それなのに、寝起きで髪をボサボサにしているその顔は、会社では見ることのない、無防備な子どものような顔だった。
そこにいたのは、起きたと同時にぱきぱきと働き始め仕事を片づけていく、企業戦士の異名を持った男ではなかった。
-お。上手い。
そんな賞賛の言葉が、後ろから聞こえてきた。
その声に、ようやく明子は肩から力を抜いた。
「なんか、作りますか? お昼」
昼時は過ぎていたが、あれっぽっちのご飯じゃ、牧野のことだからお腹が空いているのかもと、背を向けたまま明子は牧野にそう声を掛けた。
「んー。どうしようかね」
テーブルの上に置いておいた、鍵を弄っている音がした。