リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「俺様だって、無理なもんはあるんだよ。中に男でもいたらとか、いろいろ考えちまったんだよ」
「いるわけないじゃないですか。嫌みですか、それ」
「……、最近、ちょいと雰囲気変わったし。そんな、めかしこんだ格好で出てくるし」
「これ? こんなの普段着ですよ? コンビニに行こうと思って」

普段着ねえ。
ふうんと鼻を鳴らし、何か意味ありげな目つきで明子をじろりと眺める牧野に、明子は何ですかと身構えた。
こういうときの牧野は、少し要注意だ。何かを企んでいたりする。

「会社でも、たまには、そういう格好しろよ」
「はあ?」

突然、何を言い出したんだというように、明子は眉間に皺を寄せた。

「スカート。ウチに移って来てから、一度もないじゃねえか」
「足が太いからですよっ」
「それほどでもねえだろ」
「どこ、見てるんですか、もうっ」

明子の足を這う牧野の視線に、明子は牧野の頭を小突く。
顔から火が出そうだ。
そんな明子を面白がるように、明子のニットのワンピースを指で摘んだ。

「ちょっとっ」
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