リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「きんぴらにするんです」
「おう。作れ。食べてやる」

水切るか?
そう尋ねながら、すでに牧野の手はレンコンを入れたボウルに伸び、明子の返事を待たずにシンクに置いてあるザルにレンコンをあけていた。


(食べてやるって……)
(エラそうに)
(もう、なにが緊張したよ。俺様のくせに)


いーっと、口を真横に引き眉間に皺を寄せて顔をしかめたいのを堪え、明子はガスの火を止めた。
サバが入っているフライパンを調理台に置くと、もう一つ、浅いフライパンを出して、ガス台に置いた。

「水は、もっと切った方がいいのか?」
「やりますから。置いといてください」
「おう」

食べたい一心なのか、素直に明子の言うことを聞く牧野が新鮮だった。
明子は、笑ってしまいそうになる。

フライパンにごま油を引いて、切っておいた唐辛子を入れ、火を点けた。
弱火でじっくりと熱して、唐辛子の香りを点てる。
その間に、キッチンペーパーで、レンコンを軽く拭いて、水気を取った。
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