リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「見ることあるんですか、あの番組」
「家に帰ってテレビつけると、やってるときがあってさ。夜中に甘いもん食ったり、なんか古い映画とか勧めたり。そんなんじゃなかったっけ?」
「甘いものは金曜で、映画は木曜ですね」
「曜日で決まってるんだ」

へえ、なるほどねえって、頷く牧野を見ながら、明子はずっと牧野の言う『生々しいもの』を考えていた。
どうやら、『関ちゃん』の切り抜きではないらしい。
でも、明子の留守中に屋探ししてたとも思えない。
一体、なんのことだと頭を捻っていると、牧野は不可抗力だから、怒るなよと、意味不明なことを言い出せた。

「なんのことです?」
「いや、トイレを借りようと思って、ドアを開けたらな、洗面所でな」
「はあ」

その言葉を聞いてもピンときた様子のない明子に、牧野は苦笑する。
しょうがねえな、お前はと、苦笑が混じる吐息にそう言葉をのせて、察しろよと、明子の額を小突く。

「お前には、ホントに、今は男がいないってことが、よおーっく判った。警戒心なさ過ぎつーか。なんつーか。リハビリしろ、少し」
「余計なお世話ですっ」

むっとした顔で、口をへの字に曲げて牧野を睨んだ明子に、牧野はにやっと笑う。
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