リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
‐お前は、極端すぎるんだよ。

かつて、牧野にそう説教した者がいた。
アメリカにいる、あの男だったかもしれない。
二十歳を過ぎたころから、自分でもそれは自覚するようになった。
本気で気を許した者に対して向ける感情に、あらゆるものが複雑に入れ混じり、それをぶつけることに歯止めが利かなくなってしまうのだ。
気を許していない者には、そんなことは決してしない。
むしろ、不快な思いをさせることがないよう、これでもかというくらい神経をすり減らし、気を遣う。
もしくは、流す涙さえ気にならないほど無関心になれた。
だから、気を許した者とそうでない者とでは、牧野の評価は大きく異なる。
俗に言う、内弁慶というものなのかもしれないが、それでも、自分のそれは、人に言わせると極端過ぎるらしい。
そんな自分を相手にする者たちは、とにかく、お前の相手は大変なのだと、呆れ笑いとともに言う。
牧野の我侭や甘えや雑言を、笑いながら受け流すことを覚えないと、振り回されてクタクタになってしまうのだと。
それを承知した上で、むしろ、そんな牧野のギャップを面白がり、牧野から離れずにいてくれる者たちが、皆、口を揃えて牧野にそう言うのだ。
それには、さすがの牧野もその場では体を小さくして恐縮して見せるしかないが、けれども、それはその場限りの反省だった。
そして、それは異性に対しても同じだった。
気を許してしまった女性にも、遠慮もなく、むしろ、厚かましさ全開で全力で甘えてしまう。
学生時代、その性格に起因しての異性トラブルは、少なくなかった。
けっこう、痛い目もみてきた。
だからこそ、気をつけていたはずなのに。
結局、明子のことも好き勝手に振り回し、知らぬ間に傷つけて、傍らから失っていた。
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