リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
溺れそうな錯覚さえ覚えながら、ゆったりとした大きな浴槽に身を沈めて、牧野はこれでもかと言うくらい体を伸ばし、大きく息を吐き出した。
体に溜まった凝りが、ゆるゆると解けていくようだった。
それと一緒に、心の凝りも蕩けていくようだった。
明子が出て行った気配を、眠っていた牧野の意識は捕らえていた。
寝ている間に出て行かせないために、あえて、玄関を占拠するように体の位置を変えて寝直したのに、その隙間を縫って、彼女は出て行ってしまった。
追いかけないと。
そう思うのに、目覚めることができない。
金縛りにあったように、体が重かった。
瞼さえ開けることができなかった。
帰ってきてくれと。
戻ってきてくれと。
何処にも行かないでくれと。
目覚めることができない牧野の意識が、必至に遠ざかっていく明子の気配に呼びかけていた。夢と現を何度も行き来しているようで、寝ているのに、疲れていく。
そして、唐突に、目覚めた。
明子が出て行ったのが、夢だったのか、現実だったのかも判らず、静かな室内に声を掛けたが返事はなかった。
そして、ようやく、明子の書き置きを見つけた。
車を取りに行って、買い物をしてくると。
食事を用意してあるから、目が覚めたら上がって食べるようにと。
そんなことが、見慣れた綺麗な字で書かれていた。
それを読んで、ようやく、牧野を腹を括った。
何度も深呼吸して、心を落ち着かせ、意を決して中に入った。
体に溜まった凝りが、ゆるゆると解けていくようだった。
それと一緒に、心の凝りも蕩けていくようだった。
明子が出て行った気配を、眠っていた牧野の意識は捕らえていた。
寝ている間に出て行かせないために、あえて、玄関を占拠するように体の位置を変えて寝直したのに、その隙間を縫って、彼女は出て行ってしまった。
追いかけないと。
そう思うのに、目覚めることができない。
金縛りにあったように、体が重かった。
瞼さえ開けることができなかった。
帰ってきてくれと。
戻ってきてくれと。
何処にも行かないでくれと。
目覚めることができない牧野の意識が、必至に遠ざかっていく明子の気配に呼びかけていた。夢と現を何度も行き来しているようで、寝ているのに、疲れていく。
そして、唐突に、目覚めた。
明子が出て行ったのが、夢だったのか、現実だったのかも判らず、静かな室内に声を掛けたが返事はなかった。
そして、ようやく、明子の書き置きを見つけた。
車を取りに行って、買い物をしてくると。
食事を用意してあるから、目が覚めたら上がって食べるようにと。
そんなことが、見慣れた綺麗な字で書かれていた。
それを読んで、ようやく、牧野を腹を括った。
何度も深呼吸して、心を落ち着かせ、意を決して中に入った。