リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「しゃしゃり出てと、そう言われるのは心外ですけど?」
吉田の様子を伺いながら、明子はそう静かに反論した。
「なにを言ってるんだ。まったく。キミの色ボケに引っ掻き回されて、どれだけ、ウチが迷惑したと思っているんだ。キミのところだって、キミの仕事を押し付けられた木村や渡辺あたりは、随分と迷惑していたそうじゃないか」
「はあ?」
明子よりも早く、その言葉に反応した木村が、唖然とした顔で吉田を見ていた。
「なにを言ってるんですか?」
「小杉主任が沼田さんを追いかけて、応援に行ってしまってから、主任のお仕事が回ってきて大変なんです、主任帰ってきてくださいと、そこで喚いていたとそうじゃないか。みんなが聞いているんだぞ」
なにも間違ったことは言ってないぞと、粘着質ないやな笑みを浮かべながらそんなことを嘯く吉田に、まさに目を白黒させるという表情になっている木村を見て、明子は軽い頭痛を覚えながらも、こっちの成敗はひとまず後回しと、自分に言い聞かせた。
いつものように、調子にのってぽろりと言ってしまった余計な一言を、都合よく脚色されて使われてしまっていることくらい、木村を問いつめるまでもなく判る。
この時間になって、ようやくロッカールームから出勤してきた集団が、面白そうに笑いながらこの光景を見ている気配に、明子の神経が尖っていく。
金曜日。
沼田と明子について、あらぬ噂が流れているらしいことを、小林は仄めかしていた。
美咲たちが作り出した根も葉もない噂話だろうと思っていたが、どうやら、あの連中が木村の言葉を脚色して広めた噂だったらしい。
そして、吉田も面白がってそれを利用しているのだろう。
沼田に気がある明子が、牧野に頼み込んで、一課の仕事にしゃしゃ出てきた。
そんな筋書きを作って、なんとかこの窮地を乗り切ろう。
すぐにバレることなのに、そんな浅はかなことを真剣に考えて実行しようとしている吉田が、明子には情けなくなってきた。
(吉田さん、あなた、そこまで堕ちたの?)
(情けないにもほどがあるでしょ。勘弁してよ。いい年してさ)
二の句が告げられず、肩をがくりと落としている明子を見て、吉田は畳み込むように喋りだした。
吉田の様子を伺いながら、明子はそう静かに反論した。
「なにを言ってるんだ。まったく。キミの色ボケに引っ掻き回されて、どれだけ、ウチが迷惑したと思っているんだ。キミのところだって、キミの仕事を押し付けられた木村や渡辺あたりは、随分と迷惑していたそうじゃないか」
「はあ?」
明子よりも早く、その言葉に反応した木村が、唖然とした顔で吉田を見ていた。
「なにを言ってるんですか?」
「小杉主任が沼田さんを追いかけて、応援に行ってしまってから、主任のお仕事が回ってきて大変なんです、主任帰ってきてくださいと、そこで喚いていたとそうじゃないか。みんなが聞いているんだぞ」
なにも間違ったことは言ってないぞと、粘着質ないやな笑みを浮かべながらそんなことを嘯く吉田に、まさに目を白黒させるという表情になっている木村を見て、明子は軽い頭痛を覚えながらも、こっちの成敗はひとまず後回しと、自分に言い聞かせた。
いつものように、調子にのってぽろりと言ってしまった余計な一言を、都合よく脚色されて使われてしまっていることくらい、木村を問いつめるまでもなく判る。
この時間になって、ようやくロッカールームから出勤してきた集団が、面白そうに笑いながらこの光景を見ている気配に、明子の神経が尖っていく。
金曜日。
沼田と明子について、あらぬ噂が流れているらしいことを、小林は仄めかしていた。
美咲たちが作り出した根も葉もない噂話だろうと思っていたが、どうやら、あの連中が木村の言葉を脚色して広めた噂だったらしい。
そして、吉田も面白がってそれを利用しているのだろう。
沼田に気がある明子が、牧野に頼み込んで、一課の仕事にしゃしゃ出てきた。
そんな筋書きを作って、なんとかこの窮地を乗り切ろう。
すぐにバレることなのに、そんな浅はかなことを真剣に考えて実行しようとしている吉田が、明子には情けなくなってきた。
(吉田さん、あなた、そこまで堕ちたの?)
(情けないにもほどがあるでしょ。勘弁してよ。いい年してさ)
二の句が告げられず、肩をがくりと落としている明子を見て、吉田は畳み込むように喋りだした。