リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「勝手を通して、いろんなところに山ほど迷惑かけたんだぞ、判っているのか、キミは」
「上からの指示でやったことを、勝手を通してと言われましても」
「なにが上からの指示だ。おおかた、沼田を助けたい一心で牧野課長に頼み込んだんだろう。まったく。牧野課長も働きすぎで、ヤキでも回ったんじゃないのか」
「失礼よっ 牧野さんのことをそんなふうに言うなんてっ 最低っ」

吉田の言葉に、美咲が目くじらをたてて怒り出したらしい。
振り返っていないので、明子にはその顔までは判らないが、思わぬところからの反論に、吉田が忌々しそうに顔を顰めて、舌を打っていた。


黙れ、小娘。


そんな言葉が、額に青筋が浮き出ているその顔に書いてあった。

いっそのこと、このまま『吉田VSお嬢様』で、部課長会議が終わるまでやりあっててくれないかなあなどと、明子は二人を眺めながらそんなことをぼんやりと考えた。


(うるさいけどね。間違いなく、うるさいけどね)
(実害は、それだけだもんね)
(それだけなら、ね。なんとか耐えられそうな気がするなあ)


思わず、がんばれ、井上さんなどと思いながら、明子は口を噤んで成り行きを見守っていた。

「小杉さんが、牧野さんを振り回して困らせているだけよっ ホントに迷惑な人っ」

打倒・牧野では揃わない足並みも、打倒・小杉では利害が一致して、それなりに両者の足並みが揃っているらしい。
その言葉に、明子は再び、がくりとうなだれたくなった。


(面倒くさい。ホンーットに、面倒くさい)
(あっちの人とも、こっちの人とも、どっちとも、絡みたくないんですけど?)
(このまま、耳栓して仕事していていいかなあ)


どうせ、部課長会議が終われば片がつく茶番だと、明子は後ろの敵と前の敵に、うんざりしながらまた肩を落とした。
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