リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「もう、さっさと辞めてくれないかしら。いい年して。いつまで、こんなお仕事をしている気なの」
カチンと突き刺さったきたその言葉に、明子はゆるりと振り返り、美咲を見た。
思いがけず自分に向けられたきた明子のきついその眼差しに、美咲がたじろいだようだった。
「こんなお仕事? 井上さん。あなた、今、そう言った?」
「……い、言ったわよ。なによ?」
「あなたが、こんなというそのお仕事は、あなたの大好きな牧野さんが、休みを返上してまで頑張っているお仕事よ? それを、こんなと言うの?」
「そんなこと」
「仮にも、この会社の取締役を名乗る人の娘が、この会社の仕事を、こんな仕事と言って馬鹿にするの? 大勢の社員の前で? 自分がなにを言っているか、判ってる?」
もう少し、考えてものを言いなさい。
まっすぐに美咲を見据えている明子の視線に耐えかねたのか、美咲は面白くなさそうに顔を背けた。
さすがに、父親の立場を少しくらいは思いやることはできるらしい。
「女が三十過ぎてまで、仕事仕事なんて。いやよねえ」
「普通なら、とっくに結婚して、専業主婦よねえ」
「ウチの総務部の本部長は女性社員よ。もう五十代になるけれど、仕事も家庭も立派に両立されてるわ」
知っているわよね?
明子のそんな問いかけに、美咲の両隣に陣取っている取りまきたちは、瞬く間に口ごもってしまう。
明子は、淡々と言葉を続けていった。
「井上さん。確か、ご親戚でしょ。女は三十を過ぎたら、仕事なんか辞めて専業主婦になっているのが当然と言っているそのお友だちを、今度、紹介してさしあげたら?」
土曜日も玉砕してなにも言えなくなったくせに、懲りない子たちだなあと、ある意味、美咲以上に考えなしでモノを言う取り巻き一号、二号と、明子になにも言い返せずにふてくされている美咲に呆れ笑いをこぼしながら、明子は仕様書の訂正作業を再開させる。
くつくつと肩を揺らして笑っている小林に、なにを笑ってるんですかっと、憂さ晴らしで吠え掛かりたかったが、吉田の声がそれを許さなかった。
カチンと突き刺さったきたその言葉に、明子はゆるりと振り返り、美咲を見た。
思いがけず自分に向けられたきた明子のきついその眼差しに、美咲がたじろいだようだった。
「こんなお仕事? 井上さん。あなた、今、そう言った?」
「……い、言ったわよ。なによ?」
「あなたが、こんなというそのお仕事は、あなたの大好きな牧野さんが、休みを返上してまで頑張っているお仕事よ? それを、こんなと言うの?」
「そんなこと」
「仮にも、この会社の取締役を名乗る人の娘が、この会社の仕事を、こんな仕事と言って馬鹿にするの? 大勢の社員の前で? 自分がなにを言っているか、判ってる?」
もう少し、考えてものを言いなさい。
まっすぐに美咲を見据えている明子の視線に耐えかねたのか、美咲は面白くなさそうに顔を背けた。
さすがに、父親の立場を少しくらいは思いやることはできるらしい。
「女が三十過ぎてまで、仕事仕事なんて。いやよねえ」
「普通なら、とっくに結婚して、専業主婦よねえ」
「ウチの総務部の本部長は女性社員よ。もう五十代になるけれど、仕事も家庭も立派に両立されてるわ」
知っているわよね?
明子のそんな問いかけに、美咲の両隣に陣取っている取りまきたちは、瞬く間に口ごもってしまう。
明子は、淡々と言葉を続けていった。
「井上さん。確か、ご親戚でしょ。女は三十を過ぎたら、仕事なんか辞めて専業主婦になっているのが当然と言っているそのお友だちを、今度、紹介してさしあげたら?」
土曜日も玉砕してなにも言えなくなったくせに、懲りない子たちだなあと、ある意味、美咲以上に考えなしでモノを言う取り巻き一号、二号と、明子になにも言い返せずにふてくされている美咲に呆れ笑いをこぼしながら、明子は仕様書の訂正作業を再開させる。
くつくつと肩を揺らして笑っている小林に、なにを笑ってるんですかっと、憂さ晴らしで吠え掛かりたかったが、吉田の声がそれを許さなかった。