リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
この事態をどうしたらいいものかと、明子は助けを求めるように小林を見たが、肝心のその小林は事の成り行きを楽しんでいるのか、ただ肩を竦めて笑っているだけだった。
どうやら、小林はお供のサルでもキジでもイヌでもないらしい。そのつもりも、今のところはないらしい。
小林の態度からそれを悟った明子は、拗ねたように少しだけ唇を尖らせた。


(まあね、きび団子はあげてないしね)
(でも、いざとなれば、助けてくれるだろうけれど)
(ただねえ……、いざというときになるまで、ホントにそうなるまで、むしろ傍観して楽しんでいそうだよねえ、小林さんの場合)
(昔から、そういうところがあるからなあ)


明子が面倒事に巻き込まれている傍らで、涼しい顔をしている小林を、明子は少しだけ恨めしげに見るしかなかった。

「報告の件は判った。そういうことなら、それでいいだろう」

ふんぞり返るようにしてそう告げた吉田に、終わりって事でいいのかなあと様子を伺いながら、明子が仕事に取り掛かろうとした。
そんな明子に、吉田がまた怒鳴りだした。

「まだ、話は終わってないぞっ キミは人の話を聞いているのかっ」

魚好きのサルだかキジだかイヌだかは、まだ戻ってきそうにもなかった。
明子はやれやれと息を吐いた。

(サルとキジとイヌは、どこ?)
(もう、けっきょく、桃太郎一人で、鬼退治しなきゃいけないんじゃない)
(仕事を片づけて、なんでこんな目に……)
(理不尽すぎるー)
(牧野ーっ)
(もうっ、バカーッ)

主のいない席を明子は一睨みして、また吉田に目を向けた。
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