リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「だいたい、吉田係長が仕事を小杉主任に押し付けたんじゃないんですか? 違うんですか? もし、仮に、小杉主任が自分にやらせてくれと言ったんだとしても、吉田係長がやるって言えば、そんな無理が通るはずないじゃないですかっ 今になってそんなこと言い出すくらいなら、どうして、自分がやりますって部長に言わなかったんですかっ 小杉主任、ホントに大変だったんですよっ 自分の仕事もやって、それで吉田係長に押し付けられた仕事までして。毎日毎日、深夜まで残業して、お昼ご飯だってロクに食べないで仕事してたんですよっ どれだけ大変だったと思うんですかっ」
「木村くん。ありがとう。もういいから。ね?」

明子は、ふわりと木村に笑いかけた。
そろそろ止めないと、泥仕合になりかねない。
万が一、木村がうっから失言などをしようものなら、吉田のことだ。すかさずその揚げ足を取り、起死回生の一発を放って木村をボロボロにするだらう。
ここが引き際だと、明子はそう考えて、木村を見た。


(大丈夫、うん。ありがとう)
(勇気凛々、元気百倍になったわ、うん)


そう伝えようとするように、明子は笑った。

「ホントに、木村がそんなふざけたこと言ってたら、俺の空手チョップで、頭かち割ってやるかと思ったよ」
「暴力反対ですっ 有段者がそんなことしちゃダメですよっ 捕まっちゃいますよっ」

川田の言葉に、木村がうきゃーっと悲鳴をあげながら頭を抱え、その様子に室内に陽気な笑いが溢れた。
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