リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
吉田に対しては静観を決め込んだかのように、なにも話しかけることのなかった大塚が、吉田を止めに入った。
そのことに、明子は驚かずにいられなかった。
止められた吉田も、なにを言い出すんだという不信の顔で大塚を見ていた。
沼田の顔にも、少なからず、驚きの色が浮かんでいた。


(なんか……)
(また事態が、変わってるような気が……)
(牧野さん?)
(まだ、なにか隠してた、とか?)
(というか、もしかして、和解が成立、していませんか? あなた方?)
(もしもーし)


なによ、人を散々煽って悩ませおいて、もう勘弁してよと喚き出したいのを堪えて、明子は事の成り行きを少し見守ることにした。

「牧野に失態はない。みっともない、的外れな八つ当たりは、もう止めてくださいよ」
「なにを言ってるんだっ 大塚も聞いていたじゃないか。小杉。木村が言っていたんだぞ。牧野課長は、あの客先に出入り禁止なんだとな」

吉田の言葉に背後から「はあ?!」と言う、木村のそんな声が聞こえ、「あー、言ったかも」と、焦ったように自白した。
その言葉に、明子は仕方ない子だなあと、笑う。

「そのようですね。そのおしゃべりについては、この後、きっちりと締め上げて叱ります。で、それがなんですか?」
「なんですかとはなんだっ 第一、そんな失態をしておいて、なんのお咎めも受けていないというのもおかしいじゃないかっ この際、そのことも追及」
「失態、ですか? どんな?」

明子の問いかけに、吉田は何度も目を瞬かせ、またその目を落ち着きなく泳がせた。
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