リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「木村くんは、失態をして出入り禁止になっているとは、言っていないと思いますけど。そう言いましたか?」
「言ってません。絶対、言ってません。そりゃ、俺はあそこに出入りできないんだよなって、課長が言っていたから、なんでですかねって、大塚主任に聞きましたけど、なにかやらかして出入りできなくなってるなんて、そんなこと、絶対に、言ってませんっ」
「判りました。でも、その口は、この後少ーっし凝らしめるからねっ むぎゅって」
吉田が口を開くより先に、そう言い並べ始めた木村を振り返って見た明子は、笑いながらそう告げる。
明子の言葉に「あちゃーっ」と呻きながらまた頭を抱えた木村は、結果的にはまた周囲の笑いを誘っていた。
「失態じゃないっというなら」
「吉田係長。もう、やめましょう。牧野に失態はない。それはあり得ない」
どう足掻いても、下手を打ったのはこっちだ。
そう言い諭す大塚に、吉田はますます逆上したように、なら、なんだと言うんだと、大塚に食って掛かり始めた。
「失態もなく、出入り禁止の訳がないだろうっ」
「引き抜きだよ。だから、関わらせないようにしてるんだよ」
会社として。
先ほどから携帯電話を弄り、メールを打ちながら明子たちの様子を窺っていた小林が、その口を開いた。
あくびをかみ殺しているようなその表情を見て、本格的に傍観者に飽き飽きし始めてきたらしいと、明子は忍び笑いをこぼす。
あるいは、牧野の結婚相手のことは伏せておきたいと考えて、明子に変わって、この件に関しては明子よりも事情を知っている自分が、もう一つの理由を原因として吉田に告げようと決めたのかもしれない。
明子も、牧野とあの会社の関係を、どこまで話していいのか判断しかねていただけに、ここは小林に任せようと口をつぐんだ。
(キジかなあ)
(サルかなあ)
(どっちかなあ)
こんな場面でも、暢気にもそんなことを考えてしまう自分に、あっこちゃんたら、まだそんな余裕をかまそうとする見栄が張れるのねと、心の中で自分に苦笑した。
「ひ、引き抜き?」
予想もしていなかった小林のその言葉に、吉田は気が削がれたように、一瞬、真顔になった。
「言ってません。絶対、言ってません。そりゃ、俺はあそこに出入りできないんだよなって、課長が言っていたから、なんでですかねって、大塚主任に聞きましたけど、なにかやらかして出入りできなくなってるなんて、そんなこと、絶対に、言ってませんっ」
「判りました。でも、その口は、この後少ーっし凝らしめるからねっ むぎゅって」
吉田が口を開くより先に、そう言い並べ始めた木村を振り返って見た明子は、笑いながらそう告げる。
明子の言葉に「あちゃーっ」と呻きながらまた頭を抱えた木村は、結果的にはまた周囲の笑いを誘っていた。
「失態じゃないっというなら」
「吉田係長。もう、やめましょう。牧野に失態はない。それはあり得ない」
どう足掻いても、下手を打ったのはこっちだ。
そう言い諭す大塚に、吉田はますます逆上したように、なら、なんだと言うんだと、大塚に食って掛かり始めた。
「失態もなく、出入り禁止の訳がないだろうっ」
「引き抜きだよ。だから、関わらせないようにしてるんだよ」
会社として。
先ほどから携帯電話を弄り、メールを打ちながら明子たちの様子を窺っていた小林が、その口を開いた。
あくびをかみ殺しているようなその表情を見て、本格的に傍観者に飽き飽きし始めてきたらしいと、明子は忍び笑いをこぼす。
あるいは、牧野の結婚相手のことは伏せておきたいと考えて、明子に変わって、この件に関しては明子よりも事情を知っている自分が、もう一つの理由を原因として吉田に告げようと決めたのかもしれない。
明子も、牧野とあの会社の関係を、どこまで話していいのか判断しかねていただけに、ここは小林に任せようと口をつぐんだ。
(キジかなあ)
(サルかなあ)
(どっちかなあ)
こんな場面でも、暢気にもそんなことを考えてしまう自分に、あっこちゃんたら、まだそんな余裕をかまそうとする見栄が張れるのねと、心の中で自分に苦笑した。
「ひ、引き抜き?」
予想もしていなかった小林のその言葉に、吉田は気が削がれたように、一瞬、真顔になった。