リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「あの会社の先代社長は、自分のところに、IT企画室を作りたくてしょうがない人だったらしい。ウチが入る前に入っていたソフト会社にいいようにされていたこともあって、自分のところにITを活用しての事業展開が企画できるような部署を作りたくしょうがなかったんだ。それで、まだ主任くらいのころの牧野に、目をつけたんだよ。ウチのIT企画室の室長にならんかってな」

小林のその話に「やっぱり、牧野さんってすごいわ」と、場の空気を読めない美咲のうっとりとした声の素っ頓狂な言葉が聞こえ、それに対して疲れたような小さなため息が、あちこちからこぼれる。
小林も、それをきっかけにするように、そこで大きく一息ついて、また喋り出した。

「ウチとしては、引き抜かれたら困るからな。だから、接触させないようにしたんだよ。一応、牧野は辞退したけどな。あちらさんはまだ、その構想は捨てきれないらしくて、機会があればと牧野をとそう狙っている節があったんでな。それが、会社として、牧野を出入り禁止にさせている理由だ。判ったか? 落ち度があって、向こうさんから出入り禁止と言われているわけじゃない。ウチの上が、必要以上に接触させたくなくて、なるべく出入りするなと、牧野に言い含めたんだ。そういう会社が、いくつかあるんだ、牧野は。ウチにこないかって話しを持ちかけてくるところがな」

優秀すぎるっていうのもやっかいだねえと、小林はおどけた口調でそうまとめた。


-やっぱり課長はモンスターだ。ハンターいっぱい。かっけーっ


木村の大きな声の独り言に、ゲームじゃねえぞと小林は笑った。

「そ、そんな話……」

唇を震わせ、やっとそんな言葉を吐き出せた吉田に、小林は困ったやつだなというように首を振った。
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