リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「この際だから言わせて貰いますけど。仕事だけじゃなくて、葬儀の手配やらなにやらも、全部、牧野課長に押し付けていきましたよね。土曜日で総務の子たちもいないし、島野係長だって広島なんですよ。吉田係長が、あれこれやらなきゃいけないんじゃないですかね、ああいうときは。社員に知らせたり、客先に知らせたり、新幹線の手配したり、斎場に花を頼んだり。あの日。やらなきゃならないことはいろいろあったのに、なにもしないで帰っちゃいましたよね。どうするつもりだったんですか?」
「どうするって」
「部長だって呆れてましたよ。あいつは、なにをしに来たんだって」
「やることがあるなら、言ってくれれば」
「言われなきゃ出来ないんですか? もう、四十も超えようって人が。情けない。牧野課長は何も言われなくたって、全部、やりましたよ?」
「課長なら、そんなことは」
「できて当然ですか? なら、吉田係長はずっと係長のままですね」
「なんだとっ」

松山の挑発するようなその言葉に、吉田は眉をキリキリと吊り上げた。

「今できないことが、課長って肩書きがつくだけで出来るとでも? 無理ですよ。言われなきゃ出来ない人は、どんな肩書きがついても、言われなきゃできない人なんですよ。だから、小杉主任に任せることにしたんじゃないんですか、部長も。一から十まで言われなきゃ、なんもできない係長より、自分で考えて動ける主任にね」
「勝手なことをっ」
「木村くんが聞きましたよね。どうして、自分からやりますと、部長に言わなかったのかって。その通りですよ。部長は、待っていたんじゃなんいですかね。吉田係長が自分が行くと言ってくるのを、ギリギリまでね」

松山の言葉に、吉田は額に汗を浮かべていた。
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