リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
松山の言葉に逆上して、そんなことを喚きだした吉田に、明子は小さく一つ、息を吐き出した。
今この場で、ことの真相を知っているのは自分と沼田だけだと、明子は観念した。
小林も松山も、おそらくは聞いていないのだろう。困惑の色を浮かばせて、明子を見ている二人の顔に、明子は仕方がないと諦めた。
小林たちもそれに関しては、吉田をだまらせることはできない。
だから、自分がやるしかないのだと、明子はそう自分に言い聞かせた。
(プレゼンは成功だってことを、吉田係長に認めさせないと)
(この茶番劇が終わらない)
それは、明子にとって使いたくない切り札だった。
使ってしまえば、吉田の息の根を止めることになるのは判っている。
そんな役目はしたくはなかった。
けれど、部長の前で更なる醜態を晒した挙句、真相を知ることになるよりはダメージは少ないだろうと明子は思った。
それが、吉田にかけてやれる精一杯の情けだ。
もしかしたら林田は、こんな事態も想定して、一度だけと言う条件付きで名前を出すことを許したのかもしれない。
ならば、覚悟を決めて自分がやらなければならないのだろう。
明子は大きく息を吸い込んで、吐きだす息に言葉をのせた。
「金曜日は、林田本部長が同席してくださいました」
喚き続けていた吉田は、明子のその言葉で、ぴたりと、口から吐き出していた無意味な言葉をた止めた。
大塚も、やれやれという顔で吉田を眺めていた野木や紀子も、その表情を強張らせて、明子を見ていた。
「ほ、本部長?」
明子の言葉に、吉田は驚愕に目を見開き、唇を戦慄かせ始めた。
「ほ、本部長が、同席したなんて……、聞いてないぞ。そんな話しは、聞いてないぞっ 部長は会社にいると。牧野もみんな会社いると。本部長なんて、そんな話しは」
呻くようにそんなことを言い出した吉田の姿に、明子は深呼吸をして心を落ち着かせ、手の色がなくなるほど、握る拳に力を込めた。
「林田本部長が、同席してくださったんです」
静かな明子の声に、吉田は息をのみ、声を止める。おどおどした顔で、明子の様子を窺っていた。
今この場で、ことの真相を知っているのは自分と沼田だけだと、明子は観念した。
小林も松山も、おそらくは聞いていないのだろう。困惑の色を浮かばせて、明子を見ている二人の顔に、明子は仕方がないと諦めた。
小林たちもそれに関しては、吉田をだまらせることはできない。
だから、自分がやるしかないのだと、明子はそう自分に言い聞かせた。
(プレゼンは成功だってことを、吉田係長に認めさせないと)
(この茶番劇が終わらない)
それは、明子にとって使いたくない切り札だった。
使ってしまえば、吉田の息の根を止めることになるのは判っている。
そんな役目はしたくはなかった。
けれど、部長の前で更なる醜態を晒した挙句、真相を知ることになるよりはダメージは少ないだろうと明子は思った。
それが、吉田にかけてやれる精一杯の情けだ。
もしかしたら林田は、こんな事態も想定して、一度だけと言う条件付きで名前を出すことを許したのかもしれない。
ならば、覚悟を決めて自分がやらなければならないのだろう。
明子は大きく息を吸い込んで、吐きだす息に言葉をのせた。
「金曜日は、林田本部長が同席してくださいました」
喚き続けていた吉田は、明子のその言葉で、ぴたりと、口から吐き出していた無意味な言葉をた止めた。
大塚も、やれやれという顔で吉田を眺めていた野木や紀子も、その表情を強張らせて、明子を見ていた。
「ほ、本部長?」
明子の言葉に、吉田は驚愕に目を見開き、唇を戦慄かせ始めた。
「ほ、本部長が、同席したなんて……、聞いてないぞ。そんな話しは、聞いてないぞっ 部長は会社にいると。牧野もみんな会社いると。本部長なんて、そんな話しは」
呻くようにそんなことを言い出した吉田の姿に、明子は深呼吸をして心を落ち着かせ、手の色がなくなるほど、握る拳に力を込めた。
「林田本部長が、同席してくださったんです」
静かな明子の声に、吉田は息をのみ、声を止める。おどおどした顔で、明子の様子を窺っていた。