リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「けっきょく、お前も最後はそうやって、牧野に付くんだなっ どいつもこいつも、牧野牧野牧野。あいつが何だって言うんだっ 小林も松山も、よく平気で下にいられるもんだな。あんな格下のヤツに使われて」
「年は下だが格は上だよ。それくらいは見極めてるからな、俺は。だから、あいつが課長になったとき、俺を使えとあいつに売り込んだ。自分で望んだ状況に、なんの不満があるってんだよ」
「僕はこう見えても、課長の後輩ですよ? 年は、僕のほうが上ですけど、僕が会社に入ったときには、牧野さんはもう、出世コース爆進し始めたからね。むしろ、僕は、先輩のことを猛追して脅かしている、くらいのつもりでいるんですけど?」

小林が飄々と表情のない顔でそう言えば、それに続けて、松山が嬉々とした声でそう言って、作り笑いを浮かべた。

「それを言い出したら、吉田係長。あなただって、同期の君島さんに使われている立場じゃないですか。しかも、年ならあなたのほうがひとつくらい上じゃありませんでしたっけ?」

松山のその言葉に、吉田は鬼の様相で松山を睨みつけた。そんな吉田など怖くもないというように、松山は笑う。
普段の穏便な雰囲気など、鳴りを潜めていた。

「吉田さん。あんたは見境がなさ過ぎるんだよ。小杉の結婚の話だってそうだ。そんなプライベートな話を、ここで持ち出す必要なんてないだろう。まあ、今のあんたには、小杉も怖い存在だろうからな、潰してやる気だったんだろうけど」

大塚のその言葉に、明子は首を傾げた。


(コワい?)
(私が?)
(なんで?)


不思議がっている明子の様子に、大塚はもういいから、戻って仕事しろよと声を掛け、犬を追い払うような仕草で、手を振った。
明子は「はーい」と、間延びしたのんきな返事でそれに答えて、今度こそ席に戻ろうとした。
けれど、吉田はまだ諦めていなかった。
明子に対して、最後の反撃を始める。
もう、自分を守るためではなく、一人でも多く自分と同じように堕とてやれという、そんな思いが滲んだ形相だった。
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