リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「牧野さん。ケンカはお仕舞いにしてください。もう、いっぱいしましたよ。いやですよ、ギスギスした楽しくないところでお仕事するの。大塚さん、ごめんなさいしましたよ。吉田係長も、これから部長にごめんなさいを言いに行きますよ」

だから、ケンカはもう終わりにしてください。
すんとひとつ、鼻を鳴らしながら、静かな声で告げられたその言葉に、ややあって、牧野は大きく一つ、息を吸い込み、吐き出した。
その背から、ゆらゆらと立ち上っていた青白い炎が静かに消えていく。

「助かったな。大塚。やっぱり、猛獣の近くには、猛獣使いがいてくれねえと困るわな」

静まり返った室内で、一人、けらけらと笑い出し茶化しながにそういう小林に、振り返った牧野が吼えた。

「誰が、猛獣ですかっ」
「小杉ぃ、どうにかしろ、それ。まだ牙むいて吼えるぞ」
「係長。いっそのこと、お仕置きも兼ねて、木村を餌に差し出しませんか」
「うぎゃー。助けてくださいー」

川田の笑いながらの言葉に、木村が両手で頭を抱えるようにして机に突っ伏した。
ご愁傷様ですというように、隣では渡辺が、苦笑しながら木村に向かい手を合わせていた。
張り詰めていた空気がゆるゆると解けだし、牧野はいつもの口調で、小林に苦情を並べ立てた。
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