リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「去年リリースされた改修分、とにかく、おかしいんです。今のミスも、確かに上原さんのちょんぼなんですけど、でも、画面構成がいきなり変わっちゃったから、こういうミスがすごい増えてるんです」
「構成が、変わった?」

牧野が理解に苦しんでいる様子を見て、明子は少し唇を尖らせるようにして、伝わらないことがもどかしくて焦れている子どものようにしゃべり続けた。

「キー項目の並び順が、全部、バラバラになっちゃったそうですよ。今までは、ちゃんと統一されていたのに。出荷指示の入力画面も、発注依頼のこの画面と、キー項目は同じ順番で並んでいたんです、前は。それが、改修されたら、発注依頼書ナンバーとお客様コードが逆転しちゃってるんです」
「それは……、設計思想を根底から覆しちゃってるね」

片肘を付きながら、島野はずっと明子の顔を眺めていた。
面白いおもちゃを見つけたようなその目に、牧野が威嚇するように舌を鳴らして、島野に警告していた。
明子は牧野のそんな様子に少しだけ首を傾げながら、島野の言葉に、こくんと頷く。

「みんな、前の画面に慣れちゃってるから、つい、お客様コードの欄に発注依頼書ナンバー入れちゃってみたいな、そういう入力ミスがすごく増えてるって。それが顧客マスターに登録されていないコードだと、いきなり顧客情報の登録画面に変わって、顧客情報の登録しないと抜けられなくなってたり」
「その前に、登録するかどうか、確認メッセージが出るだろ?」
「前は出てましたけど、今は問答無用で顧客情報の登録画面に変わっちゃうそうです。なんで、そんな改修したんですか?」

むぅっと。
明子は更に唇を尖らせて、牧野に訴えた。
なんでと俺に聞かれてもなあと、牧野はまた髪をかき乱した。
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