リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「あんときは、そぼろ弁当だったな」

牧野が悪びれることもなく、昔話のように語りだした。

「鳥のそぼろと卵のそぼろと。確か、里芋の煮っ転がしも入ってたな」

よく覚えているもんだと、小林が小さく肩を竦める。
明子は、牧野のその言葉に眉をキリキリと吊り上げた。

「自白しましたね。今、間違いなく、犯人は俺だと自白しましたねっ」
「別に隠しちゃいねえし」
「もうっ どうやって開けたんですかっ 引き出しっ」
「さあな」
「あー。俺、それ見てたわ。この目で、しっかりと」

笑っている小林が「俺は、そのトリック解けるぞ」と、明子に言い放った。
いや、解けるぞじゃなくて、見ていたならどうして止めてくれないんですかと、そう食ってかかりたい衝動を辛うじて堪えて、明子は謎の答えを小林に迫った。

「どうやったんですか?」

教えてください。
解けない完全密室の謎解きを強請る明子に、小林は笑いながら真相を告げ始めた。

「簡単だよ。この引き出しの鍵って、二つあるだろ」
「ええ」
「お前、一つは、机の中に入れっぱなしだろ?」
「そうですね。まあ、合鍵の意味ないですけど」
「帰るときは、引き出し、鍵は掛けていかないだろ」
「別に、見られて困るものんかて、いれてませんし」
「だから、お前が帰った後な、鍵を盗んだんだよ、この課長さん」
「はぁっ?!」

目をぱちくりとさせ、明子は牧野と小林を交互に見た。
牧野はVサインを作って、恐れ入ったかと自慢げに笑った。
< 519 / 1,120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop