リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「そこまでして、人のお弁当を食べなくても……」
「腹が減るんだよ。燃費がいいから、この体は」
「座っているだけじゃないですかっ」
「バーカ。フル回転で働く脳みそが使うエルネギーはな、半端ねえんだぞ。脳は大食らいの臓器って言われてんだぞ」

俺が盗み食いするときは、忙しいとき限定だったろと主張されると、そればかり否定しがたい事実なだけに、明子も反論する気力がなくなった。
なんて理不尽な言い分なんだと思いながらも、反論できずに頬を膨らませる。
作ってきたお弁当を食べられてしまうことには、どうやっても納得できなかったけれど、牧野をやり込めるための言葉を見つけることができなかった。


(牧野メ)
(いつかきっと、この食べ物の恨み、晴らすんだからっ)
(覚悟してなさいよっ)


明子自身もまた食べることが好きなだけに、積もり積もったその恨みは、明子の中で巨大な雪だるまになっていた。

「買ってくればいいだけなのに、わざわざ、主任のお弁当を食べるんだ」

課長、判りやすいなあ。
木村のその呟きに、小林がまたケタケタと笑い出す。


(判り、やすい?)


きょとんとした顔で木村を見ている明子に、木村はえへへと笑って「なんでもなんですよ」と、誤魔化した。
牧野がバツの悪そうな顔で軽い咳払いをしている様子に、明子はますます、いったいなんだろうと眉を寄せた顔になる。
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