リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「もう、結構ですっ なにを言ってるのか、判りませんっ」

突然、会議室のドアがバタンと開き、耳に響く女の子独特の金切り声が聞こえてきたかと思うと、泣いて怒った顔の美咲が中から出てきた。

「どうして、そんなことひどいこと、命令するんですかっ 制服なんてイヤですっ あんな、全然、可愛くないの服。ぜったいにイヤですっ システム部は、私服でいいはずでしょっ」

どうして、自分がこんな大人たちに叱られているのか判らない。
そんな顔をして、美咲は中にいる者たちを睨みつけているようだった。
そして、その目をまっすぐに明子に向けた。
悔しそうな、きつい目をして、明子を睨んだ。
その目に、明子はまた肩を落として湿っぽい息を吐いた。


(なんか、また、ケンカ売ろうとしてます?)
(もう、面倒はいやなんですけど?)


勘弁してよと、明子は疲れ果てた顔で美咲を眺めた。

サーモンピンクのワンピースは、胸元にたっぷりのフリルがあしらわれ、絞られたウエストは華奢な体型が一層強調されていた。
袖口にも裾にも、繊細なレースがあしらわれている。
膝上のスカート丈から覗く小さな膝が、可愛らしい。
ファー付きのブーティーは、すらりと細い足に似合っていた。


(あの手の色って、細い子じゃないと、似合わないのよねえ)
(あたしは、ぜったいムリだなあ)
(いいなあ)


ケンカを売られるであろうことが予想される状況下で、明子はそんなことをのほほんと考えていた。
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