リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
カツカツとヒールに鳴らして、怒れる足取りで明子に歩み寄ってきた美咲は、いきなりキンキン声を張り上げた。

「あなたでしょっ あれこれ、言いつけた人っ 女子のロッカー室のことまで、あの人たちにペラペラ喋ってっ サイテーッ」
「なんのこと?」
「惚けないでよっ タバコのことも、ケータイのことも、みんな、あなたが言いつけたんでしょっ」
「タバコ? ケータイ?」

訳が判らず、なんのことかと首を傾げるしかない明子のことを、美咲はなじり続けた。

「主任だからって、いい気にならないでよっ あなたなんか、ただのお荷物のお局様のくせにっ 三十過ぎても結婚もできないような、だっさいただのおばさんじゃないっ 牧野さんに周りウロウロして、牧野さんに迷惑かけることしかできない厄介者のくせにっ さっきだって、あなたのせいで、牧野さんがひどいことばっかり言われて、可哀そうよっ それに、去年やった私たち仕事にまでケチつけてっ 何様のつもりよっ」

よほど、腹が立つようなことを会議室で言われてきたのか。
顔を真っ赤して明子を責め立て続ける美咲を、明子は唖然とした顔で眺めるしかなかった。


(毎度のことながら……)
(突っ込みどころが満載過ぎて、どこからどう言えばいいのやらだわ)
(まあ、おばさんの件はOK、でいいか)
(厄介者もお荷物も、この際OKでいいわ、もう)


一日に二人の最強クレーマーと戦う気力は、元気が売りのあっこちゃんにもないんだけどなあと、突然のことに回らない頭でそんなことを考えていると、明子のその沈黙に美咲はさらに逆上したらしい。
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