リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「なにか言いなさいよっ 少しくらい仕事できるからって、それがなによっ それがそんなにエラいのっ」
「えー、とね。なによと言われても、ね。ここは会社だもの。頂いてるお給料に見合うだけのお仕事は、ちゃんとしないとね。あなたのお父様が困ってしまうわよ?」
お給料泥棒になっちゃうでしょう。
静かにそう言い諭す明子に、美咲はまた「なによっ なによっ そうやって、屁理屈ばっかり言ってっ」と、喚きたてた。
(いやいやいやい。屁理屈じゃなくて、理屈を並べているつもりなんだけど……)
(どうしたらいいわけ? この困ったちゃん)
言葉の通じない生き物を前に、頭を抱えるしかない状態で、明子は黙り込むしかなかった。
そんな明子の前で、美咲は自分の言い分だけを一方的に並べて、明子を責め立てた。
「お化粧もロクにしないで、人前に平気で出てくるような、サイテーな大人のくせにっ そんな恥かしい人のくせにっ あなたこそ、ちゃんとしなさいって叱られなさいよっ 毎日、かんばってきちんと綺麗にしている私が、どうしてあの人たちに叱られなきゃいけないのよっ 叱られなきゃいけないのは、あなたでしょっ」
「でも、お客様からクレームを頂いたことはないし、会社からも改善要求されたことはないけど?」
なにが問題なのと、明子は美咲にそう尋ね返した。
「いい年した大人が、お化粧もしないで人前に出るなんて、とっても恥ずかしいことだってっ ママが言ってたわっ」
「お化粧もしないでって、誰のこと言っているんだい? まさかと思うけど、小杉くんのことかい?」
久しぶりの帰還で、社内のできごとをじっくりと観察して楽しんでいたような島野が、美咲のその言い分に笑いだし、それから言い諭すように美咲に語り出した。
「よく見てごらん。彼女なら、ちゃんときれいにお化粧してるだろう。女の子なのに、それが判らないのかい?」
「そんなていどのお化粧なんて」
「ここは会社だよ。お仕事するところなんだよ。そういう場に相応しい、服装とお化粧をしているのは、小杉くんのほうだよ。井上くんのその服装とお化粧は、デートのときだな。ちゃんと、オンとオフは使い分けないと」
笑みを浮かべた顔で、そう淡々と言葉を続けていく島野に、美咲は目をぱちくりと瞬かせて押し黙った。
「えー、とね。なによと言われても、ね。ここは会社だもの。頂いてるお給料に見合うだけのお仕事は、ちゃんとしないとね。あなたのお父様が困ってしまうわよ?」
お給料泥棒になっちゃうでしょう。
静かにそう言い諭す明子に、美咲はまた「なによっ なによっ そうやって、屁理屈ばっかり言ってっ」と、喚きたてた。
(いやいやいやい。屁理屈じゃなくて、理屈を並べているつもりなんだけど……)
(どうしたらいいわけ? この困ったちゃん)
言葉の通じない生き物を前に、頭を抱えるしかない状態で、明子は黙り込むしかなかった。
そんな明子の前で、美咲は自分の言い分だけを一方的に並べて、明子を責め立てた。
「お化粧もロクにしないで、人前に平気で出てくるような、サイテーな大人のくせにっ そんな恥かしい人のくせにっ あなたこそ、ちゃんとしなさいって叱られなさいよっ 毎日、かんばってきちんと綺麗にしている私が、どうしてあの人たちに叱られなきゃいけないのよっ 叱られなきゃいけないのは、あなたでしょっ」
「でも、お客様からクレームを頂いたことはないし、会社からも改善要求されたことはないけど?」
なにが問題なのと、明子は美咲にそう尋ね返した。
「いい年した大人が、お化粧もしないで人前に出るなんて、とっても恥ずかしいことだってっ ママが言ってたわっ」
「お化粧もしないでって、誰のこと言っているんだい? まさかと思うけど、小杉くんのことかい?」
久しぶりの帰還で、社内のできごとをじっくりと観察して楽しんでいたような島野が、美咲のその言い分に笑いだし、それから言い諭すように美咲に語り出した。
「よく見てごらん。彼女なら、ちゃんときれいにお化粧してるだろう。女の子なのに、それが判らないのかい?」
「そんなていどのお化粧なんて」
「ここは会社だよ。お仕事するところなんだよ。そういう場に相応しい、服装とお化粧をしているのは、小杉くんのほうだよ。井上くんのその服装とお化粧は、デートのときだな。ちゃんと、オンとオフは使い分けないと」
笑みを浮かべた顔で、そう淡々と言葉を続けていく島野に、美咲は目をぱちくりと瞬かせて押し黙った。