リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
あと三十分ほどで、昼休みとなろうかという時間。
古巣の営業に顔を出し、社内システムのバグを聞き取ってきた明子が戻ってくると、雷タイムは終了したらしく、君島が窓を背にして立ち、その傍らにイスに座った牧野が向き合うように並び、話し込んでいた。
松山の班は客先に向かったらしく、すでに姿がなかった。
岡本も、今日は外らしい。姿がなかった。
笹原の姿もなかったが、イスに上着が掛かっているところを見ると、外出したわけではなさそうだった。
並んで立つと、牧野のほうが拳一つ分ほど、君島より上背があるが、牧野はイスの背もたれを前にして、三輪車を跨いでいる子どものような姿勢で座り、君島を見上げていた。
明子の位置からでは牧野の表情は見えないが、君島の柔らかな表情から、なんとなく、牧野の表情も想像がついた。
(ふふふ。君島さんの前だと、牙のなくなった、人懐っこいドーベルマンになっちゃうもんねー。牧野さん)
(というか、ただのイヌ?)
そんなことを考えてしまうと、ぶんぶんと振っている尻尾が見えるようで、思わず、くすりと笑いが漏れる。
それをかみ殺して席に着こうとすると、牧野の声がそれを止めた。
「どうだった? 営業のほうは」
明子に気付いた牧野がそう尋ねながら、ちょっと来いと手招きする。
古巣の営業に顔を出し、社内システムのバグを聞き取ってきた明子が戻ってくると、雷タイムは終了したらしく、君島が窓を背にして立ち、その傍らにイスに座った牧野が向き合うように並び、話し込んでいた。
松山の班は客先に向かったらしく、すでに姿がなかった。
岡本も、今日は外らしい。姿がなかった。
笹原の姿もなかったが、イスに上着が掛かっているところを見ると、外出したわけではなさそうだった。
並んで立つと、牧野のほうが拳一つ分ほど、君島より上背があるが、牧野はイスの背もたれを前にして、三輪車を跨いでいる子どものような姿勢で座り、君島を見上げていた。
明子の位置からでは牧野の表情は見えないが、君島の柔らかな表情から、なんとなく、牧野の表情も想像がついた。
(ふふふ。君島さんの前だと、牙のなくなった、人懐っこいドーベルマンになっちゃうもんねー。牧野さん)
(というか、ただのイヌ?)
そんなことを考えてしまうと、ぶんぶんと振っている尻尾が見えるようで、思わず、くすりと笑いが漏れる。
それをかみ殺して席に着こうとすると、牧野の声がそれを止めた。
「どうだった? 営業のほうは」
明子に気付いた牧野がそう尋ねながら、ちょっと来いと手招きする。