リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
それ、どうしたんですかと尋ねようとしたが、それより先に君島が明子に喋りかけた。

「すまないが、年内いっぱい、土建屋の件、頼みたいんだ」
「へ? 私、ですか?」
「野木をリーダーに、沼田をサブでチームにする予定なんだが、タイヤ屋が終わらんことには人が回せなくてな」

その言葉に、明子は目をぱちくりとさせて君島を見た。
これからは君島が陣頭指揮を取って進めるものだと思っていただけに、意外だった。


(大塚さん、どうなるんだろう)


自分で蒔いた種だし、本人も腹は括ったと言っていた。それだけのことをした自覚は、本人もあるのだろう。心配する義理はないけれど、気になった。
今日、改めて大塚と向き合い話をしてみて、牧野や沼田が言ったような悪意が本当に大塚の中にあったのか、疑問に思えてきた。
だから、大塚の去就が気になった。
大塚の様子を見るついでに、今まで意図的に見ないようにしていた一課の面々に、明子は目を向けた。

吉田は憑き物が落ちたように、静かだった。
けれど、目は空ろだ。
島野は、肘をついて指を組み合わせた手の上に顎を乗せて、ディスプレイを眺めていた。
野木と紀子と沼田は、手帳を広げ、あれこれと打ち合わせているようだった。
安藤は顔を伏せ、項垂れていた。
よほど、きつい雷が落とされたらしい。
坂下と新藤は、不貞腐れたような様子だった。
幸恵は随分と泣いたらしい。
目を真っ赤にして、泣きはらした顔で、話しをしている沼田たちを、何度もちらりちらりと見ていた。

そして、大塚は。
机の上の書類等を整理して、身辺を片付け始めているようだった。
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