リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「大塚は、広島に行ってもらうことになってな」

明子の戸惑いに気付いたのか、君島がそう説明し始めた。

「代わりに、三人、こっちに戻して、タイヤ屋のチームに入れることにしたんだ。さっき、部長の承認は貰ったんでな」

どうやら、君島はこれを機に、今までのチーム分けに手を入れて、若干の再編をすることに決めたようだった。
明子は「そうですか」と、小さく頷くしかなかった。
ちらりと牧野を見たが、そんな話には興味がないというように、手の中のものを弄っていた。

島野が携わっている広島は案件は、ようやく設計が終わり、これから開発作業に入る段階らしい。
データの持ち出しはもちろん、各種帳票も一切外に持ち出せないため、設計から全て、客先での作業になっていた。


(まあ、開発作業ならね)
(大塚さん一人で、三人分の仕事は余裕でするだろうけど)
(タイヤ屋さんって、これから結合テストだっけ?)
(増員して、人海戦術で一気に片付けようってとこかな?)
(でも、三人も入れるの?)
(三人?)
(そんなに、厳しいことになってるの?)
(野木主任の代わりに、誰かを入れなきゃならないのは判るけど)
(あれ?)
(でも、君島さんもいるんだよね?)
(ん?)


なんか計算が合わないなあと首を傾げている明子に、君島は種明かしをした。
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