リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「ひどいですよ。そんなウワサを流されたら、私、ホントにお嫁にいけなくなりますっ」
「ん? 大丈夫だろ、それは」
明子の言葉に意味ありげに笑う君島を見て、明子は「なにが大丈夫なんですかっ」と、頬をぷっくりと膨らませた。その顔に、君島はやれやれと零しながら、鼻の頭を掻いている牧野を見て、なんだかなあと力なく笑う。
「喧嘩上等で乗り込んだりなんて、ぜったいにしてませんからねっ 怖くて、ガタガタ震えていた、か弱い子羊を捕まえて」
「なにをふざけたことを。月曜日に、どれだけかましてきたんだよ、お前」
手の中のものを眺めながら、けたけたと笑っている牧野の足を、明子は爪先でこつんと蹴り、それから、思い出したように君島に尋ねた。
「金曜日。お一方だけ、月曜日にはいらっしゃらなかった方が同席されたんです。お名刺を頂けなくて、お名前が判らないんですが。その方が、随分と沼田くんを褒めてくださいました」
沼田くんも、お名前が判らない方だそうで。
そう続けられた明子の言葉に、君島はどんな人だったと訝しげに尋ねた。
いきなり、そんな会議に顔を出してくるような人物に、君島も心当たりがないらしい。
「えーと。その……、とても、きつめのパーマと言いますか、まあ、俗に言うパンチパーマと言いますか。そんな髪型で」
「なあ。もしかして、背の低いじいさんか?」
驚きの声が、君島からではなく、牧野から上がった。
「ん? 大丈夫だろ、それは」
明子の言葉に意味ありげに笑う君島を見て、明子は「なにが大丈夫なんですかっ」と、頬をぷっくりと膨らませた。その顔に、君島はやれやれと零しながら、鼻の頭を掻いている牧野を見て、なんだかなあと力なく笑う。
「喧嘩上等で乗り込んだりなんて、ぜったいにしてませんからねっ 怖くて、ガタガタ震えていた、か弱い子羊を捕まえて」
「なにをふざけたことを。月曜日に、どれだけかましてきたんだよ、お前」
手の中のものを眺めながら、けたけたと笑っている牧野の足を、明子は爪先でこつんと蹴り、それから、思い出したように君島に尋ねた。
「金曜日。お一方だけ、月曜日にはいらっしゃらなかった方が同席されたんです。お名刺を頂けなくて、お名前が判らないんですが。その方が、随分と沼田くんを褒めてくださいました」
沼田くんも、お名前が判らない方だそうで。
そう続けられた明子の言葉に、君島はどんな人だったと訝しげに尋ねた。
いきなり、そんな会議に顔を出してくるような人物に、君島も心当たりがないらしい。
「えーと。その……、とても、きつめのパーマと言いますか、まあ、俗に言うパンチパーマと言いますか。そんな髪型で」
「なあ。もしかして、背の低いじいさんか?」
驚きの声が、君島からではなく、牧野から上がった。