リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「えーと、確か、先代社長は引退されて、娘さんご夫婦と海外にって」
「そのはずだったんだけどな。やっぱ、仕事の虫が騒いで、ダメだったか」
「牧野を、いくら口説いてもなびいてくれんから、今度は沼田に狙いに変えたか?」
ややこしい人が戻ってきたなと、君島も顔をしかめて舌を鳴らす。
けれど、牧野も君島も零す言葉とは裏腹に、どこかこの事態を楽しんでいるような感があった。
それが、先代社長と彼らの関係が友好的であることを物語っていた。
「えーと。それは……、今度は沼田を引き抜こうとするかもしれない、つうことですか?」
野木が眉間に皺を寄せて、君島にそう尋ねる。
「かもな。まあ、そんな強引なことはしないから、そう警戒しなくても大丈夫だが、なにか気になるようなことがあったら、言ってくれ。沼田も、もし、なにか言われたら、一応、教えてくれな」
君島の言葉に、沼田は体をびくんと跳ね上げて、はいと大きく頷いた。
「野木さん。ちゃんと、そのあたりはガードしてくださいよ」
引き抜きの言葉に顔をしかめた紀子が、野木のスーツの袖を掴んでそんなことを言うと、野木は舌打ちをしながら「判ってるよ。いちいち、うるせえな」と答えた。
「さすが。優良物件。目ざとい人はすぐに見つけるな」
島野は感心したようにそんなことを言って、くすりと笑った。
「そのはずだったんだけどな。やっぱ、仕事の虫が騒いで、ダメだったか」
「牧野を、いくら口説いてもなびいてくれんから、今度は沼田に狙いに変えたか?」
ややこしい人が戻ってきたなと、君島も顔をしかめて舌を鳴らす。
けれど、牧野も君島も零す言葉とは裏腹に、どこかこの事態を楽しんでいるような感があった。
それが、先代社長と彼らの関係が友好的であることを物語っていた。
「えーと。それは……、今度は沼田を引き抜こうとするかもしれない、つうことですか?」
野木が眉間に皺を寄せて、君島にそう尋ねる。
「かもな。まあ、そんな強引なことはしないから、そう警戒しなくても大丈夫だが、なにか気になるようなことがあったら、言ってくれ。沼田も、もし、なにか言われたら、一応、教えてくれな」
君島の言葉に、沼田は体をびくんと跳ね上げて、はいと大きく頷いた。
「野木さん。ちゃんと、そのあたりはガードしてくださいよ」
引き抜きの言葉に顔をしかめた紀子が、野木のスーツの袖を掴んでそんなことを言うと、野木は舌打ちをしながら「判ってるよ。いちいち、うるせえな」と答えた。
「さすが。優良物件。目ざとい人はすぐに見つけるな」
島野は感心したようにそんなことを言って、くすりと笑った。