リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「大塚。なにか、引継ぎがあるか?」
「特にはないかと」
君島の呼びかけに、振り返った大塚が淡々とそう答える。
明子は君島の様子を観察したが、大塚に対して、なにか腹に逸物があるような感じには見えなかった。
朝の大塚の様子を見ていた限りでは、今回の一件は、沼田に聞かされたような思惑があってやらかしたことのように、どうしても思えなかった。
君島の様子を見て、明子はますます判らなくなってしまった。
興味なさそうな牧野の肩を、つんと指で突っつくと、明子を見上げた牧野は目を細めて笑い、あとでなと、唇だけを動かして明子に答えた。
やはり、事態はまた少し変わっているらしい。
(もうっ)
(あやうく、大塚さんまで、えいやーって、退治しちゃうとこだったのにっ)
バカバカバカと拳を振り上げたい気持ちを堪えて、明子は怒ったように牧野を睨んだ。
「急なことで悪いが、頼むな。医者の方は、大丈夫か?」
「ええ。薬はありますし。一応、紹介状も書いてもらったんで、向こうで通院します」
「無理はするなよ」
「はい」
「酒も、ほどほどにな」
「うるせえな」
君島の言葉に続いた牧野の言葉には、ふんと鼻を鳴らすあたり、いかにも大塚らしい対応だったが、明子にはそれを笑っていられる余裕はなかった。
(なによぅ)
(みんなして、あれは仮病みたいな言い方したくせに)
(ホントに、病気なんじゃない)
(まだ、通院が必要なくらい、弱ってたんじゃない)
(もうっ)
散々、明子を振り回してきた男たちの会話を聞きながら、明子はつい口を尖らせ拗ねた。
(男って)
(男って)
(男ってーっ)
(もう)
(もう)
(もうーっ)
肝心なことは言わないんだからーっと、盛大に頬を膨らませて、明子は拗ねた。
「特にはないかと」
君島の呼びかけに、振り返った大塚が淡々とそう答える。
明子は君島の様子を観察したが、大塚に対して、なにか腹に逸物があるような感じには見えなかった。
朝の大塚の様子を見ていた限りでは、今回の一件は、沼田に聞かされたような思惑があってやらかしたことのように、どうしても思えなかった。
君島の様子を見て、明子はますます判らなくなってしまった。
興味なさそうな牧野の肩を、つんと指で突っつくと、明子を見上げた牧野は目を細めて笑い、あとでなと、唇だけを動かして明子に答えた。
やはり、事態はまた少し変わっているらしい。
(もうっ)
(あやうく、大塚さんまで、えいやーって、退治しちゃうとこだったのにっ)
バカバカバカと拳を振り上げたい気持ちを堪えて、明子は怒ったように牧野を睨んだ。
「急なことで悪いが、頼むな。医者の方は、大丈夫か?」
「ええ。薬はありますし。一応、紹介状も書いてもらったんで、向こうで通院します」
「無理はするなよ」
「はい」
「酒も、ほどほどにな」
「うるせえな」
君島の言葉に続いた牧野の言葉には、ふんと鼻を鳴らすあたり、いかにも大塚らしい対応だったが、明子にはそれを笑っていられる余裕はなかった。
(なによぅ)
(みんなして、あれは仮病みたいな言い方したくせに)
(ホントに、病気なんじゃない)
(まだ、通院が必要なくらい、弱ってたんじゃない)
(もうっ)
散々、明子を振り回してきた男たちの会話を聞きながら、明子はつい口を尖らせ拗ねた。
(男って)
(男って)
(男ってーっ)
(もう)
(もう)
(もうーっ)
肝心なことは言わないんだからーっと、盛大に頬を膨らませて、明子は拗ねた。